ダイヤモンドの未来
「先生、熱上がっちゃいます。」

やっと、小さな声を出す。

「大丈夫、そんなすぐ反応しないって。」

頭の上から、先生の声が響く。

30秒の体温計は、何となく信用できなくて、90秒の体温計を使っている私。

よかったのか、悪かったのか、

早く過ぎてほしいのか、過ぎないでほしいのか、

恥ずかしいけど、あったかい90秒。



『ピピピッ』体温計が鳴る。

長いような短いような、90秒が終わった。


先生が右手で体温計を抜き取り、確認している。

「37.9、このまま落ち着くといいな。」

先生が、明るく言う。

そして、身体を抜いて、再び絨毯に座った。

寒くなった背中が寂しい。


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