ダイヤモンドの未来
「昨日の夜は、38度2分だったんだよね？」

それは本当。

「はい……でも…」

「でも？」


寒気がするときは、まだ熱が上がっている最中だという。

寝るときに、寒気がしたから、もっと熱が上がった気がする。

余計な心配はかけたくなくて、言葉を濁す。

言いかけてしまったことで、余計気にさせてしまったらしい。

「香江ちゃん、教えて。でも？」

最初の診察の頃のように「ちゃん」付けで呼ばれる。

優しい瞳で覗き込んでくれてはいるが、逃がさないという強い雰囲気を感じる。

それでも、まだごねてみる。

「そんな大したことじゃ…。」

「じゃあ、教えて。」

頭をポンポンされたら、もうだめだった。

「でも…寒気が したから、もっと熱上がったかもしれないと思っただけです。」

「それじゃ、寝るときしんどかったな。ついててやれなくて、ごめんな。」

先生が、謝ることじゃないのに、首を振るしかできない。

< 192 / 331 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop