ダイヤモンドの未来

「ごめんな。

医者が？男が？、男の医者が？苦手なのかもしれないけど。

泣きわめいても、引っ掻いてもいいから、ちょっとごめんね。」

先生が床に片膝を付き、私の靴を脱がせ、足を台に置く。

先生がふいに、私を見上げる。

心配そうに優しく探る瞳が、私を覗き込む。


「泣きわめけるくらいなら、こんなに抱え込んでないかな。」

先生の言葉に、目の奥がじわっと熱くなる。

慌てて、ハンドタオルをポケットから出し、両目に押し当て、唇を噛み締める。

「痛かったら言ってね。」

先生が、靴下を脱がせる。

先生の手は、さらっとしていて温かい。

あの医者と違うから、大丈夫、大丈夫…。

「外側の方が痛いかな？」

「はい。」
声の震えは隠せない。


「この辺の奥に痛みはない？」

先生の触れた場所は、嫌な痛みがするところ。

「あります。」



「自分で爪先動かせる？」

かすかに、足を動かす。



「ちょっと動かすね。」

「うっ…」

足首を動かされ、思わず声が漏れる。

「ごめん、痛かったね。動かすのはおしまい。」

先生が靴下を履かせてくれ、立ち上がる。

「よくがんばりました。」

とまたもや、子どもに言うように頭をポンポンと撫でてくれる。

優しいしぐさに、また、目の奥がじんわりするのを、慌てて押さえる。

触れられたことへの嫌悪感がなかったのを気づきもせずに。