ダイヤモンドの未来
先生が出てきた。

「待たせてゴメンね。」

スーツにコートを羽織り、前のボタンは開けたまま、黒のマフラーをシンプルに締めている。

スーツ姿は珍しい。そして、格好いい。

思わず見とれて、返事が遅れてしまった。

いつもは、外来でYシャツ、ネクタイの後でも、ネクタイを外して、ニットを着ていたりする気がする。

と言っても、仕事終わりに会うことはほとんどないので、見かけた程度の印象だけど。

「スカートと珍しいね。似合ってるよ。コートも可愛い。」

…「あっ、先生もスーツ珍しいですね。」

褒められて、うれしくて、素直にありがとうございますと言えたらいいのに、そらしてしまった。

先生は、後部座席のドアを開けると、いつものパソコンバックと結婚式の引き出物が入っているような、大きな茶色の紙袋を積んだ。



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