ダイヤモンドの未来
「あの…」

声をかけてきたけれど、本人はコーヒーカップを持ち、その取っ手を親指でこすりながら、それを見ている香江。

「あの…好きです。」

小さな小さな香江の声が聞こえた。

一瞬、聞き間違えかとも思うが、顔は真っ赤だ。

「ありがとう。」

コーヒーカップを持ったままの香江を壊れ物を扱うように包むように抱きしめる。

はじめて言われたその一言は嬉しかったに尽きる。

どれくらいそうしていただろう、香江が、

「よかった…」

と満足そうに口にした。

「よかった?」

分かったようで、分からないような一言。

「やっと、言えたから。」

コーヒーカップをさっと取り上げ、流し台に置き、ぎゅっと抱きしめ、その言葉を吸い込むように、口づけた。

おずおずと背中に回された手が温かい。


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