ダイヤモンドの未来
「お願いします。」

と頭を下げ、机の上を見ると注射器。

師長が行ってしまったから、打つのは先生だよね…。

大丈夫、先生はあの医者とはちがう…ちがう…。

自分の心臓の鼓動が早まっていくのが分かる。

手が震えそうで、膝の上で手を組み、唇を噛む。

「ごめんな、打つの俺なんだけど。
先に注射終わらせような。」

先生には気づかれていたらしい。

「予診表ある?」
「…はい。」

ポケットから二つ折りにした予診表を差し出す。手は少し震えていた。

先生は、そのことには触れず、机に向かい予診表を開く。

「卵アレルギーとかはない?」
「…はい。」

「今日体調悪いところはない?」
「…はい。」

返事の声がどんどん小さくなるのは気のせいではないはず。

「熱は大丈夫だし、左に打とうか。」

先生が注射器にワクチンを入れ終わり、私の方を向いた。

また、動けない私。
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