恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
グランドホテルの一室。
彼女が指定した部屋の前に立っている。
ブザーを押せず、ネクタイを緩め襟ボタ
ンを外し息を吸う。
意を決して恐る恐るブザーを鳴らした。
しばらくして扉が開く。
「ガチャ」
中から美鈴が姿を現す。
「なんのようだ?」
突き放した彼女とこうして2人きりで会
えた嬉々する気持ちを隠し声をかけた。
「中に入って…」
強張った表情を変えず答える彼女。
奥に入って行く美鈴の後に続いて扉を閉
めた。
歩みを進めて行くと部屋の中央でドレス
脱ぎ、下着姿の美鈴が立っている。
「なぜ、そんな格好をしているんだ」
黙り込み美鈴は、俺に歩みよってくる。
一歩、二歩と後退ると壁にぶつかり、逃
げ場のない俺に抱きつく美鈴。
「なにやってるんだ…美鈴離れろ」
美鈴は抱きついた腕に力を入れ戸惑う俺
を翻弄する。
セクシーな下着姿の美鈴に体は反応して
いるが、まだ理性が保てる間に離れよう
ともがく。
胸を押し付け唇にキスをする美鈴。
あの日の夜が頭をよぎった。
唇を離し、美鈴の顎を掴み見つめる。
「あの日の続きがしたいのか⁈」
頷き答える美鈴。
「お願い、一度でいいの」
瞳を潤ませ見つめ返す。
降参だ。
浩輔の代わりでもいい、抱いてやるよ。
「優しく抱けないがいいのか?」
「めちゃくちゃにして……最初で最後だ
から…」
その瞬間、美鈴の唇を荒々しく貪った。
お前の体に俺を忘れられないように刻ん
でやる。
だから、優しく抱いてなんてやらない。
美鈴をベットに押し倒し、手をつきお尻
から倒れこんだ彼女を跨ぐと、スプリン
グが揺れる。
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外すと美
鈴の眼を隠し後頭部で縛った。
せめてその瞳に映る俺を浩輔と重ねてほ
しくないから…俺を感じてくれ…。
シャツのボタンを外し、床に脱ぎ捨て両
手で美鈴の頬を包むように触れる。
触れるキスを啄むように何度もし、手は
頬から露わになっているうなじを指先で
撫で首から肩へと手を移動すると艶かし
い声に麻痺していく。
何度も苦痛に歪める美鈴の顔が徐々に歓
喜に代わり、声をあげ始めた。
「フッ……感じているのか⁈この後どう
してほしい?」
「いや、そんなのいや…」
「そんなんじゃ、わかんないだろう⁈ち
ゃんと言えよ。どうしてほしい?」