恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
だが、自分のしたいことがわからないま
ま就職先をさがしても、現実は厳しくな
かなか見つからない。
早く、就職先を見つけ姉を安心させてあ
げようと思ってた矢先の出来事で、私の
ただ一人の姉の幸せを反対する理由なん
てあるわけがない。
「週末に彼がここに来るから、仲良くし
てね」
「もちろん…どんな人かな⁈楽しみ」
「うふふ…素敵な人よ」
大好きな姉が、幸せそうに微笑んでいる。
約束の日、姉は彼の為に料理を作ってい
た。
部屋中にひろがるビーフシチューのいい
匂い。
『ピンポーン』
古いアパートの呼び鈴が、響いた。
「お姉ちゃん、来たみたいよ」
「美鈴、お願い…出て」
最後の味見をしていた姉に頼まれ、ドア
を開けるとそこにいたのは私が一目惚れ
した彼が立っていた。
驚きとショックで言葉が出ない。
「美鈴…どうしたの⁈浩輔じゃなかった
⁈」
顔を出した姉と交互に彼を見た。
浩輔?
この人の名前は、大輔じゃないの?
「浩輔、いらっしゃい。この子、妹の美
鈴なの」
「初めまして…美鈴ちゃん」
「…初めまして…」
「やだ、美鈴。何、緊張してるの⁈」
「えっ…」
緊張⁈ 違う。
他人の空似⁈
「さぁ、入って…ご飯食べましょう」
「お邪魔します…」
浩輔さんは、何度か来たことがあるのか
慣れた様子で奥へ入って行った。
私が、姉の部屋に居候し出して3ヶ月。
お邪魔虫の私のせいで、彼も着づらかっ
たのだろう。
「結婚の話になって突然でごめんね」
「いえ、お姉ちゃんが幸せならいいんで
す」
「そう言ってもらえるとうれしいよ。春
から職場が異動になることになって、な
かなか会えないと思うと離れていたくな
くってプロポーズしたんだ」
彼の横で恥ずかしそうに微笑んでいる姉
を優しく見つめる浩輔さん。
同じ職場⁈
それならこの人はやはり別の人だ。
「お姉ちゃんをよろしくお願いします。
…あの…」
「なに?」
「浩輔さん、ご兄弟いますか?」
「あぁ、いるよ」
「美鈴…紹介してもらえば‼︎浩輔と同じ
くらいイケメンよ」
「もしかして、双子とかじゃないですよ
ね⁈」
「そうだよ」
「確か、コンフォルトにいるのよね」