恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

俺に声をかける時も、頬を染め目線をず

らしながらも浩輔と重ねて見ているのが

わかった。


報われない恋に想いを寄せる美鈴が哀れ

に思えていた。


そんなある日、偶然見かけた美鈴は1人

で店の前で立っていた。


「そんなところでなにしてるんだ⁈入ら

ないのか?」


驚く美鈴。


「…だい…すけさん⁈」


「そんなに驚くなよ」


浩輔と思ったのか驚く美鈴。


「浩輔達と待ち合わせ?」


「ううん、違うの…」


「3人一緒じゃないなんて珍しいな…」


「‥そんな毎回一緒ってわけじゃないん

だけど、そう見えるの?」


「あぁ…お前はお邪魔虫だけどな…」


つい、意地悪く言ってしまった。


何度も顔を合わせ、会話するようになる

とお互いに敬語が消え、ざっくばらんに

なっていた。


「ひどい…わかってるわよ。浩輔さんは

お姉ちゃんが好きすぎて男を近づけさせ

ないぐらいだもの。」


まじかよ。


あの浩輔が、そこまでするのか?


1人の女であいつは変わったのか。


そんな独占欲がお前あるなんて昔の俺た

ちから想像できない。


「それはすごいな。…俺には想像つかな

い世界だ。双子なのにあいつの気持ちが

わからないな。」


悲しそうに微笑む美鈴。


「それより、お前は店の前でなにしてる

んだ?」


「あっ、あのね。バイト‥しようと思っ

て…。ほら、私、就職浪人だからお姉ち

ゃんに何かお祝いしてあげたいのにお金

ないし、それでバイトしてプレゼントを

あげようと思ってたらここのお店募集し

てるから…。」


「そういうことか…。」


頭の中で、思惑が過る。


「マスターは、中にいるからお願いして

きたらどうだ⁈」


「うん…そうだね。…ありがとう。行っ

てくる。あっ、さっきの話、お姉ちゃん

に内緒ね」


「あぁ、頑張れよ。じゃあな。」


手をふり店の前を後にした。


春先になるとバイトが就職するとかで人

手が減るからか祖父は人手を欲しがって

いた。だから雇うのはわかっていたが、

まさか、翌日から美鈴がバイトとしてい

るとは思わなかった。


その日から、気づかないうちに俺は美鈴

にどんどん惹かれ初めてしまっていた。


「大輔さん、オーダーお願いします。」

伝票を手渡し、ホールに戻って次の仕事

を始める美鈴。


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