恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
美鈴の腕を掴み雅樹達と別れた。
「送って行く…家はどこだ?」
美鈴は目をパチパチとさせ驚いている。
「口が聞けないくらい酔ってるのか?」
「酔ってないわよ」
「酔ってるだろう…足元がふらついてる」
「離してよ。歩けるんだから…」
「離していいのか⁈」
睨む美鈴に負け腕を掴む手を離すと、歩
き出した美鈴はすぐによろける。
「大丈夫か⁈」
背後から体を支え、声をかけた。
「優しくしないでよ。あなたらしくない」
頭を殴られたように動きが止まる。
「俺らしいってなんだ?」
「……それは…」
口ごもる美鈴。
「まぁいい。そんな格好で1人だと危な
いから、送って行く」
「いいって…」
「お前に何かあったら浩輔達に会わす顔
がないから、送らせろよ」
「……また、浩輔⁈」
声が低くなる美鈴。
お前の好きな男だろう。
何が気に入らない。
俺だってお前の前で浩輔の名前を呼びた
く呼んでる訳じゃないんだ。
「車の鍵、部屋から取ってくるからお前
も来るか?」
「……」
頷く美鈴を連れ、コンフォルトの上の部
屋に戻った。
3階建ての建物の下がコンフォルト、そ
の上は賃貸マンションになっている。
その一室を俺の部屋として使用している。
もちろん、マンションのオーナーは祖父
だ。
祖父は、マンションに住まず父達と一緒
に一軒家に住んだまま、老後を満喫して
いる。
時折、オーナーとして店にも顔を見せ、
俺のマスターぶりを評価していく。
祖父の為にも失敗は許されなかった。
この数年、死に物狂いで頑張ってきた結
果がやっと出てきて、売り上げが伸びで
きているがまだ、合格点はもらえていな
い。
祖父の目は厳しく、まだ学ぶ事がたくさ
んある。
いつか必ず、合格点をもらえるように頑
張るだけだ。
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「酔い冷ましてから帰るか?」
なぜか美鈴ともっと一緒にいたくて、遠
回しに部屋に誘う。
「…いいの⁈」
「あぁ、お前さえ良ければだが…」
頷く美鈴を確認し、部屋の鍵を開けた。
扉を開け、暗い玄関の電気をつけようと
スイッチに手を伸ばすと背後から抱きつ
く美鈴。
突然の衝撃に心臓が驚いている。
早くなる鼓動。