恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
「聞きたいことって何?」
「あぁ、そのことか⁈お前、俺と浩輔の
違いを姉貴みたいにわかるのか?」
「当たり前じゃない。大輔の目の方が細
いし、笑った時に目尻にシワができるし
右の口角が上がるの。外見でいうと下唇
に小さなほくろがあるし、大輔は、うず
が右にあるけど浩輔さんは左だし、それ
に大輔の方が声が低いし…」
あいている手の指を折っていく美鈴。
「まだ、あるのか?」
「まだ、あるわよ。大輔は同じ顔って思
ってるけど、全然違うから…お姉ちゃん
も2人は似てないって言ってる…」
「あははは〜…あーぁ…笑える」
「なんで⁈」
「悩んでたことがバカみたいだな。俺た
ちを区別できる奴はいないってずっと思
ってたからか、お前もそうだと思い込ん
でた。大きな勘違いして、ひとりで腹立
ててお前を傷つけて3年も無駄にして、
本当にバカだよな」
「それなら私もバカよ。大輔が浩輔さん
にこだわってた理由に気づいてなかった
もの。もっと早く大輔に会いに来ればよ
かった」
「俺が悪いんだ。お前を傷つけて会おう
としなかったから会いに来れなかったん
だろう⁈」
「会いに来るまで3年かかっちゃった」
「ごめん…」
美鈴の首元に顔を埋める。
「お前が会いに来なかったら、こうして
いられなかったんだな」
美鈴の体を抱きしめる。
「あのね‥もう一度大輔に拒絶されたら
お見合いするつもりだったの。26だし前
に進もうと思って‥会いに来たの」
「もう、見合いする必要ないよな」
すがる俺
「うん…もう離さない」
「離さないでの間違いじゃないのか?」
「私が、大輔を捕まえたのよ」
「ふっ…お前には負けるよ」
美鈴の体を横にずらし、顎をとらえキス
をする。
愛する女を手に入れた。
もう2度と悲しませないと誓い、彼女を
抱きしめたまま眠りについた。
ゴソゴソと音がし、目覚める。
「ん…美鈴」
「ごめん…起こした⁈」
「いい…それより浴衣着て何してるんだ
⁈」
「私、今日は仕事よ。1度帰って着替え
ないと仕事に行けないから帰るの」
「仕事先に服を置いてないのか?」
「あるけど、昨日と同じ服着れないでし
ょう」