恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
そう言いながら、浴衣を着ているが帯を
結べずにいた。
時計を確認する大輔。
見ればまだ朝の7時過ぎだった。
「送って行く」
「大輔も仕事あるでしょう。大丈夫よ」
なにが大丈夫だ。
「帯を結べないのに⁈」
ウッと固まる美鈴。
サッと仕事着に着替え美鈴の手をとる。
「ほら、行くぞ」
テーブルから鍵を拾い、玄関を出る。
駐車場に向かう途中、美鈴が尻込みしだ
す。
「私、1人で帰れるから…大丈夫よ」
「お前、どこに住んでるんだ?」
「………」
「おい…俺に知られたらまずいのか⁈」
「そんなことない。…」
「なら、どこだよ」
「……ここ」
「……はー、なんだって⁈いつからだよ
?」
「3年前から…」
「ふざけんな…部屋どこだよ?」
「二階の奥…痛い。引っ張らないでよ」
下の階かよ。
「うるさい」
美鈴の手を引っ張り二階に上がると、美
鈴に部屋の鍵を開けさせズカズカと入り
部屋を見渡して、1人暮らしだと確認す
る。
「今日の仕事、何時からだ?」
「11時から…」
それなら…美鈴を引き寄せる。
「あっ…ダメ…仕事あるでしょう」
大輔の胸に手をあて距離をとる美鈴。
「時間は、たっぷりある。どういうこと
か説明して貰おうか?」
「うん…インスタントだけどコーヒー飲
む?」
「あぁ…」
美鈴は大輔の腕から抜け出し、キッチン
に向かいケトルでお湯を沸かす。
その間にトーストを焼いて、冷蔵庫から
卵とレタス、ケチャップとマヨネーズを
取り出しスクランブルエッグとオーロラ
ソースを作る。
「チン‥」
ちょうどトーストが焼きあがり、サンド
イッチにしてコーヒーと一緒に出してき
た。
「なにもないけど、朝食食べて‥」
「あぁ、サンキュー」
2人はキッチンテーブルに向かいあわせ
で座り、終始無言のままサンドイッチを
食べ終えた。
先に口を開いたのは大輔だった。
「美味かった。ごちそうさま」
「いいえ‥どういたしまして」
ごちそうさまと2人は両手を合わせ見つ
める。
「さて…説明して貰おうか?返答しだい
でただで済むと思うなよ」
美鈴は、睨む大輔にビクッと体が動く。