恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

何度も瞬きして驚く美鈴を無視して、浴

室に連れ込むと、シャワーを頭からかけ

頭から順番に洗っていく。


「どうだ⁈気持ちいいか?かゆいところ

はないか?」


「まるで美容師さんみたい」


「美容師はこんなことしないだろう」


「俺はトリマーだから、隅々まで綺麗に

して飼い主に渡さないとな」


「飼い主って誰?」


「コンフォルトのマスター」


「うふふ…なに、ごっこ遊びなの⁈」


「さあね…」


浴室で甘やかし洗い終わると鏡台の前で

美鈴の髪をタオルで包む。


「さて…タオルドライしようか」


「もう、自分でするから…大輔は仕事に

間に合うの?」


「まだ、余裕ある。お前は⁈」


「うん…そろそろ準備しないと間に合わ

ないかな…」


ドライヤーを手に持つ大輔。


「ほら、乾かすぞ」


「いいのに…」


「なんか言ったか⁈」


「ううん、お願いします」


美鈴の髪をわしゃわしゃと乾かしていく。


「痛いって…」


「時間ないんだから我慢しろよ」


「もう、自分でするから…」


「駄目だ。ほら、これならいいだろう」


大輔は、優しく手ぐしで髪に温風をおく

っていく。


「後はブラッシングと全身ケアか?チッ

‥時間ないな」

「大輔のせいでしょう⁈」


「あはは‥とりあえずブラッシングは譲

ってやるよ。だけど、続きは夜だからな」


「全身ケアって…⁈」


「ほら終わったぞ」


大輔は、美鈴の言葉を無視し脱いだ服を

着だした。


ネクタイを首にかけスラックスのポケッ

トに手を突っ込むと、美鈴の手をとり、

手のひらに部屋の鍵を持たせた。


「なんで鍵?」


「元ノラだからってフラフラしてないで

ちゃんと飼い主の家に帰るんだぞ」


美鈴の唇に軽く触れるキスをし微笑む。


「………」


鍵と大輔の顔を交互に見ている美鈴。


「さて…ご主人様は仕事に行ってくるか

らねこは、外で仕事して来いよ」


「……行ってらっしゃい⁈」


「なるべく早く帰るから、起きて待って

ろよ」


美鈴の頭を撫で大輔は部屋を出て行った



「……うそ…そう言うこと⁈」


大輔の意図する意味をやっと理解した美

鈴は赤面した。

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