恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
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外も暑くなり夜でも気温が下がらなくな
ってきたことで、週末になると飲み歩く
客が増えてくる。
いつもならラストオーダーの23時になる
頃には、終電を逃すまいと客達は帰って
行き席がまばらになる店内なのに…週末
のせいかオールナイトを決め込む客達は
なかなか帰らない。
部屋で美鈴が待っていると思うとお金を
落としていく客達が憎らしく思え、時間
が経つにつれ苛立ってくる。
「ラストとったんだよな…」
スタッフに確認する大輔。
「はい…」
「今日は、12時には閉めるから、お客に
ちゃんと言っておけよ」
「はい…伝えます」
今までなら、閉店時間を過ぎても客の為
に店を開けていた。
だが、今日は…いや、これからは俺の為
にケジメをつける。
仕事を終え部屋に戻ったのは、夜中の1
時過ぎだった。
玄関のノブを回すとガチャと開く扉。
ドキドキしながら部屋の中へ入っていく
と、ソファの上で丸まって寝ている美鈴
がいた。
フッ…(本当にねこだな)
笑みを浮かべつぶやていた。
寝室からタオルケットを出して美鈴にそ
っとかける。
ダイニングテーブルの上には、美鈴が作
ったであろうオムライスが置いてあり、
それはまだ温かく、ついさっきまで美鈴
が起きて待っていてくれたのがわかる。
(さすがにこの時間にオムライスはきつい
な)
だが、せっかく美鈴が作ってくれたのだ
からとオムライスを食べた後、汗を流す
為にシャワーを浴びた。
美鈴の傍らでビールを飲みながら美鈴が
いる幸せを感じていた。
(お前が俺を好きだったなんてな…あの頃
気づいていたらもっと早くこうしていら
れたのか‼︎ そういえばいつから俺を好き
だったんだ⁈)
ふと疑問に思う大輔。
美鈴の頬を撫で、記憶を辿るが思い当た
るようなことがなかった。
初めてあったのは、浩輔らと3人で店に
きた時のはず…あの時は確か浩輔に紹介
され美鈴も『初めまして』と挨拶してい
た。
一卵性の双子の兄弟の違いなんて、その
時にわかるはずはない。どちらをよく知
らないとわからないはずだ…それならい
つだ⁈
いや、浩輔をよく知っていたから違いが
わかったのか⁈
そうじゃないと微妙な声のトーンや誰も
気づきもしない口角が上がる癖がわかる
はずはない。
訳のわからない嫉妬心が湧き上がる。