恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
俺がそんなことを考えているとも思わな
い美鈴が、気配に気づき目を覚ました。
「…大輔…おかえり。寝ちゃっててごめ
んね」
体を起こす美鈴。
「ん…気にするな。オムライスありがと
うな‥美味かった」
「本当に⁈」
頷く。
「よかった」
大輔の側に擦り寄り、頬を染める美鈴。
そんな美鈴を愛しく思う。
さっきまでの訳のわからない嫉妬をして
たことがバカらしくなる。
美鈴を抱き寄せ唇に触れる。
それに応える美鈴は、俺の首に腕を絡め
濡れてる髪をまさぐった。
「まだ、濡れてるわよ」
首にかけてあるタオルで頭を拭きはじめ
る美鈴。
「もう‥大きな子供ね」
されるまま美鈴を見つめていた。
(いいよな‥毎日美鈴が待っていてくれる
そんな日が来ればいいのに……)
「どうしたの⁈そんなに見ないでよ」
恥ずかしがる美鈴の手を止め、無意識に
抱きしめた。
「なぁ‥」
「な〜に?」
「……朝の続き‥」
本当は、違う言葉を口に出すつもりでい
たが、思いとどまった。
まだ、早急すぎる。
とりあえずは、同棲から始めるか⁈
そのために、美鈴を誘導しよう。
俺なしではいられないように…側から逃
げ出さないように…甘い餌を欲しがるよ
うに…。
「朝も言ってたけど、全身ケアってなに
するの?」
「ねこならなにするかな⁈ 肉球のマッ
サージとか肌チェックとか耳そうじとか
か⁈」
「もう‥わかんないで言ってたの⁈」
「美鈴が喜ぶならなんでもいいんだよ。
飼い主としてペットを可愛がるのは当然
だからな」
大輔の意図する意味がわかった美鈴。含
み笑いの大輔の腕から逃げ出し、後退り
背を向けた。
「私、…部屋に帰るね」
「俺を置いていくのか⁈」
切な気につぶやく。
立ち止まった美鈴を背後から捕らえた大
輔によって、そのまま寝室になだれ込む
事となった。
「…大輔、明日も仕事でしょう⁈」
(時間的に今日だが、めんどうなツッコミ
はやめだ。)
「大丈夫だ。ちゃんと夕方から出れるよ
うに調整してきた。時間は、たっぷりあ
るし、どこからする?」
「私の都合はいいの⁈」
「マッサージするのに、都合なんて必要
か?」
「マッサージ?…って、なんで服を脱が
すのよ」
大輔は、美鈴のシャツのボタンを外し始
めた。
「ねこが服着てるか?」
「着てないけど…いつまでそれ続くの?」