恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

そこへ、大輔がカウンターから出てきた。


「店、任せてきたからそいつ俺が送って

いくわ」


そいつって誰?


ただ、近づいて来る大輔を見ていた。


「大輔さん、すみません。お願いしてい

いですか?」


飯島さんが大輔に頭を下げている。


「あぁ、美鈴の方こそ迷惑かけたんだろ

う。悪かった。後は、俺が見るからごめ

んな」


もしかして、私の話をしているの⁈


私の腕を掴み歩き始める大輔の手を振り

はうこともできないままついて行く。


「送って行く…家はどこだ?」


はい⁈


今、なんて言ったの?


「口が聞けないくらい酔ってるのか?」


「酔ってないわよ」


酔いも一気に冷めた。


だって、大輔が話かけてくれている。


「酔ってるだろう…足元がふらついてる」


「離してよ。歩けるんだから…」


かわいくない私…


「離していいのか⁈」


つまらない言い合いをしてしまい、大輔

が掴む腕を離した。


その隙に逃げ出すように歩き出したがす

ぐによろけてしまう。


「大丈夫か⁈」


背後から体を支えられた。


「優しくしないでよ。あなたらしくない」


「俺らしいってなんだ?」


彼を怒らせてしまった。


「……それは…」


私の気持ちを無視して、肝心な時に突き

放すくせに……


「まぁいい。そんな格好で1人だと危な

いから、送って行く」


送られたら、住んでいるところがばれて

しまう。


それだけは避けたい。


「いいって…」


「お前に何かあったら浩輔達に会わす顔

がないから、送らせろよ」


「……また、浩輔⁈」


どうして、大輔自身が心配だと言ってく

れないの⁈


「車の鍵、部屋から取ってくるからお前

も来るか?」


「……」


彼に、思いの丈をぶつけるチャンスを逃

すわけにはいかない。


頷き連れ、コンフォルトの上にあるの大

輔の部屋に向かった。


部屋の前で、ためらっている大輔。


どうして鍵を開けないの?


「酔い冷ましてから帰るか?」


それって、部屋にあがってもいいってこ

とよね。


「…いいの⁈」


「あぁ、お前さえ良ければだが…」


そんなのいいに決まっている。


あなたに会いたくて再び足を踏み入れた

のだから…
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