恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
扉を開け、暗い玄関の電気をつけようと

する大輔の背後から抱きついた。


「どうしたんだ?気持ち悪いのか?」


わかっているくせに、ごまかして逃げよ

うとしないで。


背中に顔を擦りつけるように首をふる。


体に抱きついた腕を離され、振り返る彼

の唇にキスをした。


触れるだけのキスなのに、唇が熱く大輔

の体温が上昇しているのがわかった。


昨日のキスを思い出す。


「大輔…好きなの。ずっとあなたが好き

。大輔じゃないとダメみたい。」


昨日、いや、ずっと前から言いたかった

言葉を口に出せた。


「浩輔の代わりに好きだと思っているだ

けだ」


それなのに、まだ大輔は浩輔さんにこだ

わる。


「また、浩輔なの⁈浩輔さんは関係ない

じゃない」


「お前の好きな男は浩輔だろうが…」


声を上げ、苛立っている大輔。


「……どうして、そうなるの?」


「ずっと、浩輔と俺を重ねていただろう

。気づかないと思ってたのか」


「大輔は…わかってない。気づいてない

のは大輔でしょう」


「なんのことだ?」


なんて言えば、あなたはわかってくれる

の⁈


「最初から私の好きな人は大輔なの。浩

輔さんじゃない」


突然、崩れるように座りこむ大輔。


「それじゃあ、浩輔を見つめていたのは

なぜだ?」


自信なさ気に質問する。


私の言葉がまだ信じられないみたい。


彼と視線を合わせるように座り、見つめ

る。


「いつのことを言ってるのかわからない

けど、お店で大輔を見れなくて浩輔さん

を大輔の代わりに見ていたわ。お姉ちゃ

んは、恥ずかしがる私を笑っていたけど

、浩輔さんは理解してくれたから」


大輔の表情が変わった。


「なら、浩輔と喋っている時に赤くなっ

てたり、2人を刹那そうに見ていたのは

なぜなんだ?」


なに、その誤解‼︎


あなたには、そんなふうに見えていたの⁈


「もう、なにその誤解。赤くなってたの

はたぶんその時に大輔のことで浩輔さん

にからかわれてたからよ。それに、2人

を刹那そうに見ていないから…その時は

たぶん、うらやましかったのよ。私も大

輔とこんなふうになれたらいいのにって

…」


「それなら、なぜあの時に誤解を解こう

としなかったんだ?」


聞く耳を持たなかったじゃない。

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