恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
手を引っ張られ二階の奥の部屋にどんど
んと向かって行った。
部屋の中を見渡す大輔。
「今日の仕事、何時からだ?」
「11時から…」
言葉を遮り、いきなり荒々しくキスをし
てくる。
「あっ…ダメ…仕事あるでしょう」
大輔の胸に手をあて距離をとる。
「時間は、たっぷりある。どういうこと
か説明して貰おうか⁈」
ーー
ーーーー
「なにもないけど、朝食食べて‥」
「あぁ、サンキュー」
その後、無言のまま食べ空気が重い。
ちらっと大輔を見ても、何か考えている
様子だった。
ごちそうさまと2人は両手を合わせ見つ
める。
「さて…説明して貰おうか?返答しだい
でただで済むと思うなよ」
睨む大輔にビクッと体が動くと言い逃れ
ができる自信が出てこなかった。
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大輔から部屋の鍵をもらい仕事に向かっ
た大輔を見送ると自分も仕事に行く準備
をし急いで仕事場に向かった。
お昼の更衣室では、早希ちゃんが待ち構
えていた。
「花村さん、昨日はありがとうございま
した。おかけであの2人うまくいきそう
です」
「それなら良かったわ」
大輔とのことをつつかれる前に、更衣室
をでないと早希ちゃんのことだから根掘
り葉掘り追求される。
財布を手にドアに手をかけると早希ちゃ
んに捕まった。
「美鈴さん、コンフォルトのマスターと
知り合いだったんですね」
「あっ…昔、あそこでバイトしてたのよ
。その時に、少しだけ一緒に働いたこと
があって…」
昔の恋話なんて恥ずかしくてできないわ
よ。一方的な片思いだと思っていたのに
実は誤解があって両思いなのに3年も思
い続けてたなんて言えない。
「そうなんですか⁈でも、美鈴って呼び
捨てでしたし、花村さんを見るマスター
の表情も知り合いって感じじゃなかった
んですけど…昔の彼氏さんですか?」
やっぱり、鋭い子ね。
「彼氏じゃなかったわよ。……でも、昨
日の夜から彼氏になったみたいね」
「…えっ」
驚く早希ちゃんを置いて言い逃げをして
ドアを閉めた。
大輔と思いが通じあった。そのことを、
誰かに言いたかったのかも知れない。
口に出してしまうと心はウキウキとし、
大輔の彼女になったのだと実感した。