恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
「気が強いくせに寂しがり屋だな⁈」
奥で吹き出す美鈴に雅樹が気づいた。
「あれ…確か花村さんですよね?」
「こんばんは」
気まずそうに挨拶する美鈴。
雅樹は、なにか気づいたかふくみ笑いで
返す。
「大輔さんのペットはかわいいことしま
すね。そう思いません⁈花村さん…」
「ほ、本当ですね。…一度見てみたいで
す。」
動揺を隠せず美鈴は、気づかれた事に赤
面してお金を置いて席を立つ。
「マスター、ごちそうさま」
(今さら、他人のふりをしても遅いのに)
「美鈴…うちのペットに早く帰るって伝
えておいて…」
「…………」
睨むと舌をベーっと出し帰っていった。
「あははは…」
それを見ていた雅樹は、笑いが止まらな
いのか腹を抱えている。
その側でなんのことかわからない連れの
女に出来たばかりのカクテルを出した。
「お待たせしました」
「わぁ〜、かわいいカクテル。なんて名
前ですか?」
「レディキラーって言うんですよ。飲み
やすけど度数が高いので飲み過ぎに気を
つけてくださいね」
(隣の男に……)
心の中でつぶやく…
女に笑み見せ雅樹を睨む。
雅樹は、俺の意図する意味がわかり、肩
をすくめていた。
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「ただいま」
1人で暮らしていた時には考えられなか
った。
帰る家に愛する人がいると自分の帰宅を
教える合図となった。
いつもなら玄関までおかえりと出てくる
美鈴の姿がない。
明かりのついているリビングめがけ足が
進むと、仁王立ちの美鈴。
「大輔…さっきのどういうつもり」
そうとうお怒りのようだ。
「なんのことだ」
美鈴の腰を引き寄せ、キスを促すが拒絶
する美鈴。
「とぼけないでよ。飯島さん、絶対わか
ったわよ。首のキスマークが誰がつけた
かって、それに私のことペット扱いして
ることも」
「事実だろう。別に俺は知られてもかま
わないけど…」
「私は、困るの。もう、飯島さんに会え
ないじゃない。」
「会わなきゃいいだろう。だいいち、会
う必要があるのか?」
(なぜ、困るんだ⁈)
「そうじゃなくて、偶然会った時に恥ず
かしいでしょう」
「あいつは、そんなの気にしない」
「私はするの。どうしてわかってくれな
いの⁈浩輔さんは、あんなデリカシーの
ないことしない」