恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

「気が強いくせに寂しがり屋だな⁈」


奥で吹き出す美鈴に雅樹が気づいた。


「あれ…確か花村さんですよね?」


「こんばんは」


気まずそうに挨拶する美鈴。


雅樹は、なにか気づいたかふくみ笑いで

返す。


「大輔さんのペットはかわいいことしま

すね。そう思いません⁈花村さん…」


「ほ、本当ですね。…一度見てみたいで

す。」


動揺を隠せず美鈴は、気づかれた事に赤

面してお金を置いて席を立つ。


「マスター、ごちそうさま」


(今さら、他人のふりをしても遅いのに)


「美鈴…うちのペットに早く帰るって伝

えておいて…」


「…………」


睨むと舌をベーっと出し帰っていった。


「あははは…」


それを見ていた雅樹は、笑いが止まらな

いのか腹を抱えている。


その側でなんのことかわからない連れの

女に出来たばかりのカクテルを出した。


「お待たせしました」


「わぁ〜、かわいいカクテル。なんて名

前ですか?」


「レディキラーって言うんですよ。飲み

やすけど度数が高いので飲み過ぎに気を

つけてくださいね」


(隣の男に……)


心の中でつぶやく…


女に笑み見せ雅樹を睨む。


雅樹は、俺の意図する意味がわかり、肩

をすくめていた。


******************


「ただいま」


1人で暮らしていた時には考えられなか

った。


帰る家に愛する人がいると自分の帰宅を

教える合図となった。


いつもなら玄関までおかえりと出てくる

美鈴の姿がない。


明かりのついているリビングめがけ足が

進むと、仁王立ちの美鈴。


「大輔…さっきのどういうつもり」


そうとうお怒りのようだ。


「なんのことだ」


美鈴の腰を引き寄せ、キスを促すが拒絶

する美鈴。


「とぼけないでよ。飯島さん、絶対わか

ったわよ。首のキスマークが誰がつけた

かって、それに私のことペット扱いして

ることも」


「事実だろう。別に俺は知られてもかま

わないけど…」


「私は、困るの。もう、飯島さんに会え

ないじゃない。」


「会わなきゃいいだろう。だいいち、会

う必要があるのか?」


(なぜ、困るんだ⁈)


「そうじゃなくて、偶然会った時に恥ず

かしいでしょう」


「あいつは、そんなの気にしない」


「私はするの。どうしてわかってくれな

いの⁈浩輔さんは、あんなデリカシーの

ないことしない」
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