恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
お前は何をしているんだ⁈
早希ちゃんが怒っているのがわからない
のか⁈いや、まさか、わざとなのか‼︎
「お待たせ……マスター、俺、ビール。
君は⁇」
辛そうな表情を見せる雅樹は、早希に声
をかけると連れの女にドリンクを聞くが
眼中にない。
雅樹の視線は早希ちゃんに向いている。
連れの女が気になる彼女はイラついてい
た。
「そこの女性は?」
「あぁ、気にしないで‼︎ここに来る途中
、一緒に飲まないって誘われただげだか
ら飲んだら帰るよね」
隣の女に薄っぺらい笑顔で微笑む雅樹。
俺は、ただ様子を伺うだけだった。
「俺、友達と用事あるからって言ったの
に、それでもいいから一緒に行くってつ
いて来たの君だよ」
「と、友達が女の人だなんて言わなかっ
たじゃない。」
「そうだっけ…飲む以外のこと期待して
た⁈今日は友達優先だからまた今度ね」
女の唇に軽くキスをする雅樹の表情は冷
たい。
「うん。今度、約束ね」
女は、頬を染め帰っていった。
早希ちゃんを怒らせるためのあて駒か⁈
お前は、そこまでして好きな女を遠ざけ
るのか⁈。
だが、遠ざけようとしたにもかかわらず
、結局雅樹は彼女を手放せないようだ。
俺も愛している美鈴を手放せない。
傷つけることになろうと、彼女の温もり
、美鈴と暮らした幸せを忘れるなんてで
きない。
俺はいてもたってもいられず、店をスタ
ッフに任せて美鈴の元に急いだ。
部屋の前で呼び鈴を鳴らす。
だが、応答はないまま時間だけが過ぎて
いった。
ドアに寄りかかり、美鈴の帰りを待って
いると俺と同じ顔をした浩輔と現れた美
鈴。
やはりそうなのか⁈
これがお前の答えなんだな‼︎
浩輔の代わりでも俺はお前を手放しはし
ない。
驚き、立ち止まっている美鈴の手を掴み
浩輔を見る。
「久しぶりだな‼︎」
先に口を開いたのは浩輔だった。
「あぁ、久しぶりだな‼︎」
「そんなに睨むなって…俺は病院に見舞
いに来てくれた美鈴ちゃんを送って来た
だけだからな‼︎」
「病院⁈」
美鈴を見ると美鈴は黙ったままで俺を見
ようともしない。
そんな俺らに浩輔が諭す。
「詳しくは、美鈴ちゃんに聞いてくれ…
お互い意地張らずにちゃんと話し合えよ
。でないと3年前の繰り返しだぞ」