恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
「昨日は、すみませんでした。あの、お
金支払いに来ました。」
「あぁ、雅樹が払うって言ってたから、
早希ちゃんが払う必要ないよ。」
「そんな訳には……。」
「あいつが来て先に支払われてたら、あ
いつの立場ないだろう。だから、早希ち
ゃんは気にしなくていいから…ね。」
「でも……。」
「せっかく寄ってくれたんだし何かカク
テル作るからゆっくりして行ってよ」
「……は…い」
頷くと椅子に座る早希ちゃん。
「ところで早希ちゃん、雅樹と付き合う
ことになったの⁈」
昨日の雅樹の様子からして、カマをかけ
てみた。
「…たぶん、そうだと思いますけど付き
合おうとは言われてないので自信ないで
すけど……。」
「自信持っていいと思うよ。あいつのあ
んな焦った顔初めて見たし、昔から知っ
ている俺から見たらだいぶ変わったと思
うけどね」
「どんな風に変わったんですか?」
雅樹が、眼を見張る。
「それ、今聞く⁈」
「はい…聞きたいです。今、すごく不安
なんです。話聞いたら自信持ってそうな
のでお願いします。」
背後で雅樹があわててる面白くて吹き出
す。
「プッ…」
「ごめん、さすが雅樹の仮面を壊しただ
けのことあるよ。早希ちゃん、おもしろ
いね。」
「仮面ってなんですか?」
「あいつの作った笑顔ってとこかな。男
同志だと素のあいつのままなんだけど、
女の子の前だと顔は笑ってるけど目が笑
ってないんだよね。」
「それ、私、気づいてました。すごく素
敵な笑顔なのに目が冷たいんですよね。
でも、ときどき見せてくれる笑顔の中に
作ってない笑顔と言うか自然な笑顔があ
って…優しさが伝わってくるんです。」
頬を染める早希。
雅樹は、ムッとした表情から照れ始め、
妹にからかわれているようだ。
「早希ちゃんの前だと焦ったり、イラつ
いてたり表情が変わるのは心を許してる
証拠だと思うよ。」
「そう言ってもらえるとうれしいんです
けど、…現状に満足しているのに彼を好
きになりすぎてそれ以上のことを求めて
しまいそうで不安なんです。」
「やっぱり、早希ちゃんおもしろいね。
「普通、つき合い始めたころって不安よ
りワクワクして楽しいこと考えると思う
けど、まぁ、人間は欲張りな生き物なん
だから、不安にならずに貪欲になってい
いと思うけど…、それだけ、雅樹のこと
好きってことだろう⁈」