恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
長くで1週間、それ以上かかるとお客が
流れてしまうだろう。
そのため、急ピッチで進めてもらう。
コンクリートの壁をレンガ調に外装を直
し、入り口の木製扉はそのままで内装は
壁に古いレンガを敷き詰める。
店内は古き良き時代のまま残せる物はそ
のままにし、床に木製の板を張る。
カウンター内に棚を作って、キッチンを
広く改装する。
1週間でできるだろうか⁈
改装日が決まった。
ちょうど、1ヶ月後の浩輔達の結婚式を
はさむ6月の始めに店を1週間閉めるこ
とになった。
朝のミーティングで祖父と一緒にスタッ
フに報告する。
「来月の1日から1週間、店の改装の為
に店を休むことになった。急だが、改装
後はダイニングバーとして夜遅くまで営
業する。それでわしは大輔に店を任せて
引退しようと思う。みんなには、今まで
通り大輔を助けてやってほしい」
頭を下げる祖父。
「まだまだ未熟でみんなには迷惑をかけ
ることもあると思う。だが、この店をお
客の安らげる場所にしたい。そのために
みんなの力が必要なんだ。俺についてき
てほしい」
祖父の隣で俺も頭を下げた。
スタッフ達の拍手と祖父への労いの言葉
、そして、俺への期待の言葉で感動して
しまった。
『マスターお疲れ様でした。』
『マスターに接客の何たるかを教わり、
俺たちは一人前になれたと思ってます。
ありがとうございました』
『俺たちは大輔さんについて行きます』
『大輔さん、私たちはマスターとしての
あなたに期待しています』
こんなにもスタッフに愛され幸せだ。
必ず、成功してみせると新たに決意した
。
スタッフ達は、リニューアルオープンに
向け足取りが軽くなっているように見え
た。
今まで以上に接客に丁寧で、来店したお
客に自ら告知し宣伝している。
その先頭にたっているのが美鈴だった。
まだ、スタッフとして日が浅いのに頑張
ってくれている彼女に心が惹かれる。
オープンまでの1ヶ月間は、俺は寝る間
も惜しみメニューの作成の為、キッチン
で試食を作る。
閉店後、スタッフ達はほとんどが学生の
ため帰って行くが、美鈴は協力したいと
遅くまで手伝ってくれていた。
「これを味見してくれ…」