恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
「実は、今日から2日間出張なんだ。ど
うしても、俺じゃないといけない仕事で
誰とも代われない。先生の話だと生まれ
るまで時間がかかるらしくて、凛の体
力が持たないようなら帝王切開らしい。
俺が戻るまで側にいてやってくれないか
⁈」
必要に頼む浩輔さん。
「わかったわ。仕事なんとかして代わっ
てもらうから浩輔さんは、心配しないで
仕事に行って来て…」
「すまない。美鈴ちゃんの仕事もあるの
に…」
「私の代わりはいるけど、浩輔さんの代
わりはいないんでしょう⁈早く終わらせ
てお姉ちゃんの出産に間に合うように帰
ってきてあげて…」
「ありがとう…。早く終わらせてくるか
ら頼むな」
浩輔さんは、お姉ちゃんのおでこにキス
をした。
「凛‥頑張れよ」
浩輔さんを見送った後、しばらくすると
お姉ちゃんが目を覚ました。
「お姉ちゃん、大丈夫⁇」
「…美鈴⁈どうしてあなたがいるの?」
浩輔さんは、姉に相談せずに私を呼んだ
ようだ。
「そんなことより、点滴してるんだから
心配したわよ」
「そんなことって…あなた仕事あるんで
しょう⁈」
呆れている姉。
「大丈夫よ。浩輔さんが出張から帰って
くるまでお休みもらったから…」
「もう、浩輔ったら大丈夫だって言った
のに…心配性なんだから…迷惑かけてご
めんね」
ため息をつく姉の手を握った。
「何言ってるの。私達、姉妹でしよう…
迷惑なんて思ってないから、お姉ちゃん
は、無事にお腹の赤ちゃんを生むことだ
け考えてよ」
「ありがとう…美鈴がいてくれて良かっ
た。本当は、心細かったの」
仕事を休んで良かったと思う。
「陣痛がきたのは‥いいんだけど、弱く
て点滴の中に……陣痛促進剤を入れて様
子見ましょうって…言われたのよ」
話をしている間、弱い陣痛がきたのか、
顔を歪める姉。
「お姉ちゃん、大丈夫⁇看護師さん呼ぼ
うか⁈」
「大丈夫…まだ、こんなものじゃないん
だって…」
うそ⁈
こんなに辛そうなのに…出産って大変っ
て聞いてたけど、どれほどの激痛がある
のだろうか?
「そんなに辛そうなのに…」
想像ができない…
でも、愛する人の子を産む姉を羨ましく
思う。
私もいつかはそんな日がくるのだろうか
?
産むなら大輔の子しか考えれない。
愛する人の子だから、どんな痛みにだっ
て耐えて産めるのだと……姉を見ていて
思う。