恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
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時間が経つにつれ、陣痛の間隔が短くな
り、痛みも強くなってきているようだ。
姉の腰をさすりながら、痛みに耐えてい
る姿を見ていられない。
浩輔さん…早くお姉ちゃんの側に来てあ
げて…
ときおり、浩輔さんの名前を呼び痛みと
戦っている。きっとお姉ちゃんも浩輔さ
んに側にいてほしいはず…
看護師さんがバタバタしだし、分娩室に
移動するよう指示があった時、そこにや
っと待ちに待った浩輔さんがやって来た
「間に合ったようだな。良かった」
ほっと胸を撫で下ろし、お姉ちゃんの元
へ駆け寄る浩輔さん。
「凛…側にいれなくてごめんな」
額に汗をかき辛いはずなのに浩輔さんの
顔を見たら安心したのか、手を握り微笑
み返す姉。
「…頑張れ‥頑張ってくれ…」
看護師が陣痛の間隔の合間に移動するた
め姉に付き添い始めた。
その後ろから浩輔さんと2人でついてい
く。
ほんの数メートル先までの移動なのに…
なかなかたどり着けない。
オロオロしだす浩輔さんが、姉を抱えよ
うとすると看護師に注意され、挙動不振
になる。
なにか手助けしたいのになにもしてあげ
れないもどかしさに耐えれないようだ。
分娩室に入っていく姉夫婦。
中でどうなっているのかわからないまま
時間が過ぎていく。
2時間以上たって中から聞こえる赤ちゃ
んの産声を聞き涙が溢れた。
自分のことのように嬉しい。
浩輔さんが、分娩室から出てきたが姉と
赤ちゃんはまだ出てこなかった。
「浩輔さん、おめでとう。」
「ありがとう…凛が頑張ってくれた」
「うん…お母さんになるってすごいんだ
ね」
「本当だよな…俺、側で手を握って応援
するしかできなかった。男ってダメだよ
なぁ」
涙目の浩輔さん。
「しっかりして…これからはお父さんと
して頑張っていかないと」
「そうだよ…美鈴ちゃんの言う通り、俺
、お父さんさんになったんだよな」
「もう…」
「ねぇ、お姉ちゃんと赤ちゃんは⁈」
「まだ中で、赤ちゃんは新生児室にいく
って言ってたな」
「えっ…赤ちゃん抱けないの⁇」
「明日には、抱けるよ」
「そうなんだ。で、赤ちゃんはどっちだ
ったの?」
「凛にそっくりな女の子だったよ」