恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
おかしな浩輔さん。
生まれたばかりなのに…
「女の子か…」
早く会いたいな。
お姉ちゃんが、車椅子に乗り出てきた。
なんで…⁇
「どこか悪いの⁇」
心配する浩輔さんと私に看護師さんが答
えた。
「難産で疲れた体では、まだ歩けないの
で車椅子で移動しますね」
そう言うことなんだと安心する2人。
部屋のベッドに横になる姉を休ませてあ
げたくて声をかけて帰ることにした。
「お姉ちゃん…おめでとう。お疲れさま
ゆっくり休んでね」
「ありがとう…美鈴」
げっそりとやつれた姉が微笑む。
「明日、また来るからなにかほしい物が
あったら連絡してね。じゃあ、明日ね…
…お休みなさい」
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部屋の前でドアに寄りかかる人影が見え
た。
近づいていくと、まさか…彼はまだ仕事
中の時間帯なのに…なぜいるの⁈
一瞬笑みを見せたが、隣りの男に気づき
表情が曇った大輔は立ち止まった私の手
を掴み自分に引き寄せた。
「久しぶりだな‼︎」
先に口を開いたのは浩輔だった。
「あぁ、久しぶりだな‼︎」
「そんなに睨むなって…俺は病院に見舞
いに来てくれた美鈴ちゃんを送って来た
だけだからな‼︎」
「病院⁈」
驚いている大輔が美鈴を見たが、美鈴は
黙ったままだ。
「詳しくは、美鈴ちゃんに聞いてくれ…
お互い意地張らずにちゃんと話し合えよ
。でないと3年前の繰り返しだぞ」
そう言うと浩輔さんは帰って行ってしま
った。
繋いだ手を離さないまま大輔の部屋に連
れてかれた。
会いたかった愛しい人の温もりを離した
くなかった。
そう3年前、近くにいたのに…勇気が持
てず彼の側から離れたのだ。
部屋の鍵を開け、そのまま引きこむと玄
関先で大輔に抱きしめられた。
「ごめん…俺が悪かった」
「………」
大輔が謝ってくれてる。
悪いのは私なのに…傷つけたのに。
「泣かせて…ごめん。俺を嫌いになって
も仕方ないと思っている。でも、俺は美
鈴を愛してる。お前がいないとダメなん
だ」
私も大輔を愛してる。
私が大輔の側にいないとダメなの。
大輔を見つめる目から流れる涙を優しく
指で拭き取ってくれる大輔。
「ごめんな」
「うん…許してあげる。こうして迎えに
来てくれたんだもの」