恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

翌日から改装もスムーズに進み、俺は美

鈴を忘れるために一心不乱にオープンに

向け仕事をした。


する事が山ほどあり、おかげで傷ついて

いる暇はなかった。


******************


浩輔の結婚式当日


白いチャペルの教会で愛を誓う2人。


たくさんの人たちに見守られ微笑み、涙

を流す花嫁。


浩輔がハンカチで花嫁の涙を拭き、とて

も微笑ましい光景。


誰もが祝福する中、美鈴は涙を流してい

た。


誓いの口づけをする2人をただ見つめる

美鈴。


彼女は、浩輔と自分を思い描いているの

だろうか?


俺は遠くから彼女を見ているしかなかっ

た。


自分も傷ついているが彼女も傷ついてい

る。あの時、代わりでも抱いてしまえば

よかったのではないかと涙を流す彼女を

見て思っていた。


ブーケトスの瞬間がやってくると、花嫁

は美鈴に声をかけている。


「美鈴‥今度はあなたの番よ」


そしてブーケを女達の中に投げる。


投げた先を見るとブーケは美鈴の手の中

にあった。


残酷な瞬間だった。


1人の男をめぐて、幸せの絶頂にいる女

から不幸の女の元に届く花束(ブーケ)。


できることなら美鈴をこの場から連れ出

してあげたい。


だか、彼女は浩輔と俺を重ね抱かれよう

とした。


そんな彼女が許せず突き放したんだ。


心の中で葛藤する俺は、その場から1人

逃げ出した。


披露宴会場では、親族席が隣同士ですぐ

後ろに美鈴がいた。


同僚や友人達の祝福。


Loveソングを歌う者達や、笑いをとろう

とおどける者。


にぎわう会場の中、背後から聞こえる美

鈴の声に懐かしさを感じていた。


見えないが無理をしているのが伝わる。


声をかけることもできず、酒を飲んで気

を紛らすことしかできなかった。


終盤になり浩輔が、2人の馴れ初めから

花嫁に永遠の愛を誓っている。


「‥………彼女に出会い俺は幸せです。

……いつまでも彼女を愛し続けていきま

す。」


声をおさえ、涙を流す彼女の手を無意識

に背後から掴み手を握った。


驚く彼女だが、手は握ったまま声をこら

えていた。


あんなにひどく突き放したのに、付け入

るように優しさを見せ、俺は何をやって

いるんだ⁈


そう思うと、握った手を離していた。


披露宴が終わり、彼女が小声で呟いた。


「…………来て」


まさかと思い彼女に振り返ったが、すで

に彼女は出口に出てしまっていた。
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