悲しみの側で咲く命
プロローグ





静かな個室で 私は隣に居る男と今まで話していなかった話をした

この空間でなら、私は彼に何でも話せるような気がした



彼は時折、目を見開いて驚いていたけど それでも、最後まで優しく私の話を聞いてくれた

穏やかだった

これ程まで穏やかな時間を過ごしたのはいつぶりだろう

窓から差し込む光が これからの私達の未来を写しているような、そんな風に思えた


「今までちゃんと会話したことなかったね」

私がそう言うと彼は口角をあげて少し笑った



「これは運命だったんだと思う この選択が彼を苦しめることになっても…生きていくってそういうことなんだと思うんだ…」

複雑だった

残酷だと思った

彼はいつか、いろんな人の人生を奪っていってしまうのではないかとも思った



それでも

生きていなきゃ意味がないと、思った


藻掻き苦しんで

この世界から逃げ回ってもいい


ただ、生きてほしいと思った





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