鳴かない鳥
店内は学生や会社帰りのOLで結構混み合っていた。
僕たちは空いている席を何とか探し、表通りに面したカウンター席に落ち着く。
飲み物のカップをテーブルに置くと、今井は持っていたトートバックの中からリングノートを取り出してペンを走らせる。
《急に呼び出したのに、来てくれてありがとう》
その言葉に、僕は首を横に振った。
「僕も今井さんに用があって、メールしようと思ってたんだ。だから、連絡貰えてちょうど良かったよ」
『?』
それを聞いた彼女は、不思議そうな顔をした。
「あぁ、別に嫌な話とかじゃないから、後で言うよ。でもその前に…」
喉がカラカラだった僕は、一気にカップの半分くらいまでアイスコーヒーをブラックのまま飲む。
冷たい液体が喉を通る感覚に、ようやくホッと一息ついた。
すると、
《慌てないで、ゆっくりどうぞ》
ノートに書かれた文字が目に入ってくる。
「暑いと喉が渇くよね…ところで、今井さん話って?」
尋ねると一瞬、彼女は緊張した表情を浮かべた。
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