鳴かない鳥


店内は学生や会社帰りのOLで結構混み合っていた。

僕たちは空いている席を何とか探し、表通りに面したカウンター席に落ち着く。



飲み物のカップをテーブルに置くと、今井は持っていたトートバックの中からリングノートを取り出してペンを走らせる。

《急に呼び出したのに、来てくれてありがとう》

その言葉に、僕は首を横に振った。

「僕も今井さんに用があって、メールしようと思ってたんだ。だから、連絡貰えてちょうど良かったよ」

『?』

それを聞いた彼女は、不思議そうな顔をした。

「あぁ、別に嫌な話とかじゃないから、後で言うよ。でもその前に…」

喉がカラカラだった僕は、一気にカップの半分くらいまでアイスコーヒーをブラックのまま飲む。

冷たい液体が喉を通る感覚に、ようやくホッと一息ついた。

すると、

《慌てないで、ゆっくりどうぞ》

ノートに書かれた文字が目に入ってくる。

「暑いと喉が渇くよね…ところで、今井さん話って?」

尋ねると一瞬、彼女は緊張した表情を浮かべた。


.
< 22 / 31 >

この作品をシェア

pagetop