鳴かない鳥
「あ…ごめん、ごめん。いきなり聞いても話しづらいか…そうだ、何か食べる?」
僕の問いかけに、今井は首を横に振る。
「…」
あれ…何だか気まずい空気が漂ってるの、気のせいかな。
会話が続かなくて困った僕は、正面の硝子越しに通りを眺める。
店内はクーラーが入ってて快適だけど、外を歩く人たちは暑そうな表情をしていた。
永遠に秋なんて来ないんじゃないか。
そんな馬鹿げた事を考えていると、隣の今井がストローでまだ一口も口をつけていないアイスティーを意味もなくかき混ぜる。
その仕草を何となく目で追っていると、彼女は何かを決心するように小さく頷き、再びペンを手に取った。
《ごめんなさい》
ノートに一言書いて、僕にペコリと頭を下げる。
「えっ…いきなりどうしたの?」
そうされる理由が分からなくて、僕は彼女に聞き返した。
「顔、あげて?」
言うけれど、ただ首を横に振るばかりであげてはくれない。
本当は肩に手を掛けてこちらを向かせたいんだけど、また例の感覚に襲われて倒れたりしたら大変だ。
安易に触れる事を僕は避けると、少し体を前に倒して下から顔を覗き込んだ。
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