鳴かない鳥

「ねぇねぇ、狭間くん。私はどう、似合ってる?」

律子はチラリ流し目で僕を見る。

小柄で少しぽっちゃりとした体系だが、色は白いので黒と白の組み合わせの制服は似合わないことはない。

「まぁまぁ…かな」

真顔で答えると、

「ぶっ!!」

隣でやり取りを聞いていた高村が、突然吹き出した。

「お前、正直過ぎ。少しはホメてやれよ」


「あ…」


周りから一斉に沸き起こった笑いとともに、僕は失言に気づく。

「何よ、狭間くんもだけど高村はもっと失礼ねっ!!律ちゃん涙が出ちゃう…。いいもん、いいもーん。こんなデリカシーのない人たちは放っておいて、他の男子に見せてこよーっと」

ぷぅっと頬を膨らませた律子は、

「行こう、由衣」

「あ、うん…じゃ狭間くん、またね」

まだ話したそうにしている大原の手を強引に引いて、どこかへ行ってしまった。

教室はすぐにもとの賑やかさに戻る。


「はぁ…大原、可愛かったなぁ…」


ほわんとした顔の高村は、2人が出て行った方に視線をやったまま呟いた。

「そうだな」

「最近、随分と大原の雰囲気が変わった気がするんだけど…俺の気のせいか?」

「高村もそう思う?」

「思う、思う。以前は大人しいイメージしかなかったけど、少し前からクラスの女子とつるむようになって活発になったっていうか。…な、もしかしてお前ら付き合ってたりする?」

「付き合ってないよ」

僕は笑って答えた。

「えーっ、そうなのか?俺はさっきの様子から、こっそり付き合ってるのかと…」

「付き合うんなら《こっそり》なんて僕はしないよ。そんなことする理由が分からない」

「ふぅーん」

高村はそれきり何も言わなくなる。

「そろそろ帰ろうか」

僕がカバンを持って席を立つと、

「そうだな」

高村も頷き、一緒に教室を出た。

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