鳴かない鳥
気がかり


学園祭まで後5日。


学校内は浮足立った雰囲気に満ちていて、授業の合間もその話題で持ち切りだった。

今日から朝補修が強化されたが、帰りが遅くなるのを避ける為にと午後の授業は学園祭の準備に充てられる。

それが一層生徒たちの心を躍らせていた。

だけど、


「何だよ、狭間。そのしけた面は…」


僕の重い心は、高村にはバレバレらしい。

「まだ執事役が気に入らなくて、不貞腐れてんのか?」

隣の席から、呆れたように頬杖をついて話しかけてくる。

「執事?あぁ…あれはもう諦めがついてるよ」

それは本当だ。

今さらジタバタしても仕方がない、僕は腹をくくったのだから。

「んじゃ、何でそんなにつまらなそうな顔してんだよ」

「失礼な言い方だな…つまらなそうじゃなくて、考え事をしてたんだよ」



「狭間が…考え事?」



ポカンとした表情。

あのさ…どうしてそういう顔、するかなぁ。

僕が考え事をしたらおかしいのだろうかと複雑な気分になる。

そうだ、考え事ついでにちょっと聞いてみようか。

「…なぁ、高村」

「何だ?」

「ちょっと変な事聞くようなんだけど…9組の今井ってさ、言葉話せなかったりする?」

「…いや。至って普通に話せるはずだけど」

「そっか」

じゃあ、昨日の帰りに出会った女の子…あれはやっぱり別人だったんだ。

そう思うと少し気持ちが軽くなる。

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