鳴かない鳥
☆
結局。
昼休みは教室で弁当を食べた後、高村は慌ただしく職員室へ向かい、残った僕はもやもやした気分をどうにかしたくて、持って来ていた文庫を片手に中庭へ行くことにした。
外はまだ日差しが強いけれど、木陰だったら大丈夫だろう。
夏の色が濃く残る景色の窓に視線をやって歩いてると、
「狭間くん」
ぱたぱたと走ってくる足音が近づいてきて、僕の隣に声の主が並んだ。
「大原…そんなに慌てて、どうしたんだ?」
最近の彼女は楽しそうにしていたから気づかなかったが、もしかしたらまた心の中に重い悩みでも抱えているのだろうか。
心配になって聞こうとしたその前に、彼女が口を開いた。
「狭間くん、何かあった?」
「……えっ?」
大原の問いに、僕が間の抜けた声を出すと、
「あ…えっと、その…何だか元気がないみたい、だったから…」
俯きながら、しどろもどろに答える。
「そう?そんな風に見えた?」
妙な所で勘が鋭いなぁ…僕は自分が心配される立場になっている事が可笑しくて、クスッと笑った。
「うん。なんだか沈んでる感じがしたんだけど…ごめんね、変な事聞いたりして」
「いや…もしかしたら小説の内容が気になって考えてたから、そう見えたのかも」
言って、持っていた文庫本を見せる。
「小説?」
「そう。もう少しで読み終わるんだけど、ラストが気になってさ」
「その本、そんなに面白いの?」
「あまり有名な作家ではないんだけど、この人の書くミステリーは面白い…と僕は思う」
「へぇ…」
そんな彼女の視線は本に釘付けのままだ。
興味あるのかな、これに。
「大原もミステリーとか読んだりする?」
「うん。好き…日本でも海外のものでも、結構雑食的に」
そう言って、小さく笑う。
「これ、読む?」
「えっ、いいの?」
「昼休みの間には読み終わると思うから、放課後で良かったら」
「ありがとう、じゃあまた後でね」
そう言うと、来た時と同じように走って教室に戻って行った。
その後ろ姿を見送ってから、僕は中庭に足を向ける。
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結局。
昼休みは教室で弁当を食べた後、高村は慌ただしく職員室へ向かい、残った僕はもやもやした気分をどうにかしたくて、持って来ていた文庫を片手に中庭へ行くことにした。
外はまだ日差しが強いけれど、木陰だったら大丈夫だろう。
夏の色が濃く残る景色の窓に視線をやって歩いてると、
「狭間くん」
ぱたぱたと走ってくる足音が近づいてきて、僕の隣に声の主が並んだ。
「大原…そんなに慌てて、どうしたんだ?」
最近の彼女は楽しそうにしていたから気づかなかったが、もしかしたらまた心の中に重い悩みでも抱えているのだろうか。
心配になって聞こうとしたその前に、彼女が口を開いた。
「狭間くん、何かあった?」
「……えっ?」
大原の問いに、僕が間の抜けた声を出すと、
「あ…えっと、その…何だか元気がないみたい、だったから…」
俯きながら、しどろもどろに答える。
「そう?そんな風に見えた?」
妙な所で勘が鋭いなぁ…僕は自分が心配される立場になっている事が可笑しくて、クスッと笑った。
「うん。なんだか沈んでる感じがしたんだけど…ごめんね、変な事聞いたりして」
「いや…もしかしたら小説の内容が気になって考えてたから、そう見えたのかも」
言って、持っていた文庫本を見せる。
「小説?」
「そう。もう少しで読み終わるんだけど、ラストが気になってさ」
「その本、そんなに面白いの?」
「あまり有名な作家ではないんだけど、この人の書くミステリーは面白い…と僕は思う」
「へぇ…」
そんな彼女の視線は本に釘付けのままだ。
興味あるのかな、これに。
「大原もミステリーとか読んだりする?」
「うん。好き…日本でも海外のものでも、結構雑食的に」
そう言って、小さく笑う。
「これ、読む?」
「えっ、いいの?」
「昼休みの間には読み終わると思うから、放課後で良かったら」
「ありがとう、じゃあまた後でね」
そう言うと、来た時と同じように走って教室に戻って行った。
その後ろ姿を見送ってから、僕は中庭に足を向ける。
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