スキャンダルな贈り物♡


「いっ…たい!痛い!」


『しょうがないでしょ!美奈実の髪のカール、ぐちゃぐちゃポンパなんだもん!』

 
「もうちょっと優しくしてよ…初めてなんだよ」


『やらしい言い方すんな』


「てへ」






ここは社内一階のトイレ。

芳香剤のレモンの香りが異常に充満する。



私は美奈実の髪を、狭い化粧ルームで直していた。










………なんとも剛毛。


カールがメチャクチャすぎて、髪が痛みに痛みそして複雑に絡まっている。

なんでこんなにグチャグチャなカールになったんだろ?





私は、美奈実の髪をひと通り溶かして(ここまで溶かすのすごい大変だったんだよ)、髪をハーフアップにした。









強引に溶かして薄れていったカールは、程よい味とパサツキが出てウェーブみたい。

ハーフアップすることで、大人な女性さをアップ。



止め部には、綺麗なアンティークの飾りをつけて仕上げた。





『出来たよ』

あまりの頭皮の痛みに俯く美奈実の肩を揺すって、終わったことを知らせる。


パッと顔を上げて、目の前にある大きな鏡を見る美奈実。




美奈実の目に、光沢が出来ていった。

「わーー!すごい!あたしじゃないみたい!」




仕上がった髪をポンポン、と触りながら笑って言う美奈実。


女のコって、笑顔かわいいなぁ…。












「優那はやっぱりヘアメ上手いのね。ありがとう。お礼にこれ、あげちゃう」

『ん?なにこれ?』

「ヘアフレグランスの試供品。使い方わかる?」



ぽん、と私の手のひらに置かれた小さなピンクの袋。
ピンクの紙に白いバラが描かれている。

ヘアフレグランス…か。

よくドラッグとかスーパーで売ってるけど、使ったことないや。
こういう感じのニオイって強くて、嫌い。



シャンプーがほんのり香る、って感じのが好き…







………なのに。


「使い方わかんないなら、つけてみたら?」

『いや!いい!いいよ、いらないいらない!』

「いいにおいだってば」



私の手のひらに置いたヘアフレグランスの袋の端をあける美奈実。

その瞬間、私の嫌いな臭いが漂う。




「ほら」

私の髪を強引に引っ張って、美奈実はそれをつけた。





つけた。



つけた。



つけた。









………あーあ。


『私………こういうタイプの匂い嫌いなのにぃ』

自分から、自分の嫌いな匂いがする。

「ふふ。知ってる。知っててやった」



イタズラに笑う彼女に、私は妙に腹が立った。

『お家に帰ったら、すぐ髪洗おうっと』

「そうしなそうしな。あたしはいい男捕まえてくる☆」











美奈実と一緒に、作業室に戻る。

作業室には、コーヒーの匂いが充満していた。




…どこにいっても匂いはつきものだなぁ。









その日の仕事はすぐ済ませて、そのまま急いで会社を出た。
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