スキャンダルな贈り物♡
『すいません…ここまでお願……って…、なんだ、和真さんじゃないですか』
タクシーに入るなり、運転手を見てはにかんだ。
タクシードライバーの制服を見事に着こなし、少しおちゃらけた、和真さん。
3日ぶりだ。
「お!なんだっけ?名前?んっと…」
『優那です。教えてませんでしたね』
「お!そうそう!優那ちゃんね。いろいろ圭斗から聞いてるよ」
『なにをですか?』
「ん~…まぁ、いろいろ?」
『?』
「まぁとりあえず圭斗の家に向かえば良いわけね。参りましょー」
和真さんの言葉と同時に、タクシーが動き出す。
私は、まだ、和真さんが言った「いろいろ」の意味を理解していなかった。
…そんなに深く考えていなかった。
車内で、沈黙が流れる。
沈黙を紛らわすような言葉も見つからなかった私は、窓の外に目をやった。
行き交う人…
手をつないで歩くカップル…
ブランドのブティックに入っていく女の人…
お母さんと手をつないで歩く子ども…
色々いるなぁ。
みんな、笑顔で。幸せそう。
誰の目も気にせず、キスをするカップル。
綺麗な空をバックに、自撮りをするカップル。
…私と圭斗は、そんなこと出来ない。
したくても。いくら望んでも。
一度圭斗が人気になっちゃった以上、世間を騒がせるようなことは絶対にいけない。
なんなら。
…なんなら私も芸能界に入っちゃおうかな?
なーんて。
そんなこと出来ないよね。
圭斗…
私だけを見てよ…
そんな思いは塵になって消える。
私の恋心は、どこかの隅で静かに燃える。
てかまず、正式に付き合ってるのかな?私達。
あんな軽い一言から始まったわけだけど…
前の彼氏と別れてちょっとしか経ってないのに、恋愛の仕方を、すっかり忘れてしまっていた。