スキャンダルな贈り物♡
「おかえり」
『ただいま』
目の前にいるのは、桜田圭斗。
私の…彼氏。
前みたいに、圭斗の手は、トレーを持つ手で塞がっていた。
トレーの上には、コーヒーカップが2つと、角砂糖。
圭斗は、珍しく、私が座るソファに腰掛けた。
「優那の分のコーヒーも入れといたから。よかったーナイスタイミングじゃん、俺」
……優那。
初めて名前で呼んでくれた…
頬が緩む気持ちをよそに、私は返事をする。
『ねえ?さすがにこのソファに二人はキツくない?』
「いや?俺はキツくねえけど?それより、何で来たの?」
『ん?タクシーだけど』
「運転手誰だった?」
『和真さんだよ』
全く。
今の圭斗の言葉、語尾に全部「?」がついてる。
ひと通り会話を終えて、圭斗がつけたテレビの番組を見ていた。
コーヒーを片手に、私は話す。
『この番組面白ーい』
すると、腰に回る、なにかの感覚。
みると、圭斗だった。
…てか、圭斗しかありえないよね。
「おまえ、他の男に浮気すんなよ」
ちょっと拗ねた声で。
…ふふ。
和真さんのことも信用してないのか、こやつ。
私は敢えていじわるをした。
『人をお前呼ばわりする人の言うことなんて聞きません~だ』
「はぁ?こんにゃろっ」
その瞬間。
『きゃっ』
私の小さな悲鳴と、圭斗の小笑い。
圭斗は、いつの間にか、私の体の上に股がっていた。
私は、頭の中に急に出てきた破廉恥な妄想を掻き消して冷静に言った。
『ちょっと!なにやってんの!』
圭斗はまだ笑う。
「俺、まじですんげー優那がすき」
『は!?この状況で何言ってんの?』
「すぐ赤くなるとことかさー。まじで可愛い」
『分かった!分かったから!分かったから避けて!』
私の体の上で、微笑みながら言う圭斗。
急すぎて、心臓が持たない。
「避けてほしい?」
『あたりまえでしょ!』
すると、彼は、強引に笑った。
「んじゃあ、キスして」
私は否定しようとした。
てか、いつもの私なら、否定してる。
『は!?なんでよ!』って。
けど、出来なかった。
だって、圭斗の顔が、あまりにも切ないから…
愛しいから…
コーヒーの匂いが充満するモノクロの部屋。
部屋には、さっきつけたバラエティ番組の笑い声だけが響く。
だいすきな顔が、徐々に近寄る。
それと同時に、きつく香る安達紗羽の香り。
切なくなった、なんだか苦しくなった。
私は、圭斗の心の中に入り込むように、強引に彼の服の襟を引き寄せた。
私達の恋は、やっぱり秘密にしか出来ないの。
あなたをとったら、他の何もかもを失う。
きっとお互い、まだそれが怖いの。
あなたにさえ裏切られてしまいそうで…
けど、とめられない。
あなたが、すき。
好きになってしまったの。
遅すぎた出会い。
噛み締めながら、そっと甘くキスをした。