スキャンダルな贈り物♡


今日は妙に熱っぽかった。


職場のパソコンに、目と手を集中させる。

いつも異常に、肩こりと頭痛がひどい。



風邪かな…





隣にいた美奈実が、私の様子を見て声を掛けてくれた。

「ねぇ?優那どしたの?なんか顔色、わるい」


今この状態で、美奈実の香りを嗅ぎたくない。

更に悪化する頭痛を堪えて、返事をする。




『うん…ちょっと具合悪いかも……』

「うん、そうだと思う。帰ったら?」

『いや、でも…仕事残ってるし…』


目の前のパソコンの残量を確認しながら言った。


「ん~…。その書類提出って、今日まで?」

『ううん。明日まで。けど、一度具合悪くなったらしばらく治らないから…休み長引いちゃうから…』

「そんなら尚更早く休んだほういいでしょ!無理しないの!馬鹿!今日のぶんは代わりにあたしがやっておくから、ね?帰りな、今日は」

『え?いいの?』



今は、美奈実の優しさに甘えないわけがなかった。

本当にしんどかったから。



「うん!いいよいいよ!エナジードリンク飲んだし今日は残業の気分なの!でも、今度奢ってよ?」

『うん…ごめんね…ほんとありがと……』

「あらら。なんかまた顔色悪くなったよ?タクシー何番だっけ?呼んどくから、入り口に居な」

『うん…』








パソコンを閉じて、首にマフラーを巻いた。

エアコンの室内でも、充分に寒い。



本当に風邪だ。


美奈実は、私の携帯からタクシーに電話をかける。



その間、私は会社の入り口に向かった。

エレベーターに乗っている間の、ふらふら感。


普通に歩けない。








しばらくして、タクシーが来る。

美奈実が心配そうに送ってくれた。



ペコッとお辞儀をして、タクシーに乗る。

…具合悪い。






いつもより安全運転なタクシー。

落ち着いて、少しずつ気が抜けていく感じがした。
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