スキャンダルな贈り物♡
「なあ!こいつの家まであとどんくらいだ!?」
「こっからなら…ん、と、5分かかんないけど」
「は!?んじゃあ早く優那の家まで行け!」
「いやでも先客は圭斗じゃ…」
「んなのいいんだよ!早く行け!」
意識が朦朧とする中、男子二人が話している。
私を心配そうに除く茶髪の男の人は、叫び、焦りながら話していた。
タクシーが止まる。
フワッと、誰かに抱かれる感覚。
「料金一万あれば足りるか?」
私を抱えた男の人が、財布から札を取り出してドライバーに渡した。
「一万も要らねえよ!お釣りどうすんだよ!」
「要らねえ!」
ドライバーと、私を抱えた男の人が話す。
見慣れた私の家に、私を抱えた男の人は急ぐ。
「鍵どこだ…って、開いてんじゃねえか」
玄関を強引にあけた男の人は、そのまま急いで私の家の中に入った。
ねえ、ここは私の家だよね…?
私の家ってことは分かるのに、なんであなたのことは思い出せないの…?
あなたは…だれ?
私を抱えたまま、男の人はくつを脱いだ。
そして、わたしのパンプスも脱がす。
…苦しい。
…具合悪い。
だんだん、息が荒れてくる。
つらい。どうしよう。
久々すぎる体力ダウンに、眼の奥がにじむ。
「優那…辛いのか…?」
私の頬を、男の人が撫でた。
朦朧とした意識の中で、私は懸命に声を出す。
『ね…ぇ、あな…た…誰ぇ?』
息切れと眼の奥の滲みのせいで、声が途切れ途切れになる。
「なに…泣いてんだよ……」
目の前の男の人は、切なそうに私の顔を覗きこんだ。
視界いっぱいに、男の人の顔が映る。
あ………この顔、みたことある…
愛しくて…せつなくなる……だいすきなひと…
そしてやっと分かる。
私の頬を撫でたのは、男の人ではない。
自分の、涙。
「な…泣くなよ…俺、わかんなくなるじゃん」
男の人は続けて話す。
「具合悪いから泣いてんのか?俺のことで泣いてんのか?わっかんねえよ、なあ、、俺にも理性持たねえときがあんだよ」
男の人の声が、切なくなる。
この人、何言ってんのかなあ?
…この人に心配かけちゃいけない。
直感でそう思った私は、懸命に声を出した。
『あたま…痛いの……のど…とか…体が……痛…い…』
ハァハァ、と、次第に過呼吸になる。
ねえ、はやくベットに連れてってよ。
体が、だるいの。
それに、その顔をそれ以上見てたら…なんだか…
すると、男の人が言った。
「そんな辛そうな顔すんな。今ベッド連れてってやっからな」
『…はぁ…っ』
「辛いか?」
私の途切れる息に過剰反応するその男の子。
私は甘えて、コクンと首を縦に振った。
すると、小さな舌打ち。
…なんで舌打ち?
そんなの考えるまもなく、男の子……けい…圭……なんだっけ。
まぁ、そんな感じの名前の人が話した。
「んな辛いなら、俺に移せ。お前の顔、マジで……ったく、あー、もう!」
そう言って、グイッと体ごと男の人の顔に近づけられた。
えっ、え?
その瞬間。
触れたことのある柔らかい感覚が、私の唇に伝った。
スッと、意識が抜けていく。
あ…思い出したよ。
あなた、圭斗ね。