スキャンダルな贈り物♡


『はぁ…』




本当にさっきから溜め息が止まらない。

本当にいいのだろうか、追跡なんて。

世でいうストーカーだよ?

犯罪だよ。

プライバシーの侵害だよ。








やりたくないなぁ。














とりあえずこれをしっかり終わらせれば、来月分の給料上がるって部長も言ってたし。

頑張るしか選択肢はないみたいだ。






さっそく今日の夜から、追跡作業を開始することにした。









現時刻、午前10時。

もう出発してしまおうと思ったが、真っ昼間から待機や追跡をしていたら本当のストーカーになってしまう。


仕方なく、人目のつかない夕方まで会社で待機することにした。





…明日のぶんの打ち込み…終わらせよっと。









パソコンを起動する。

マイファイルのアイコンをダブルクリックすると、昨日どっさりやった資料のまとめが表示された。


そして、その瞬間、鼻に来るキツい香水の匂い。





誰か分かった。


「わ!優那。昨日は本気で頑張ってたもんね。もうマイファイルにまとめてあるんだ」



『耳元で騒がないでよ、美奈実』








…美奈実。

この人、昨日はしっかり最後まで資料まとめたのだろうか。

他人事ではあるが少し気になる。




…聞いたりはしないけど。










私の発言に、美奈実が申し訳なさそうに言う。

「うるさかった?ごめんごめんっ」



そう言いながら美奈実は、私の隣のディスク…美奈実から言えば、自分のディスクの椅子に座った。







そして、昨日のお返しと言って、私の前に温かい缶のコンポタージュを差し出してきた。

私はそれをありがたく受け取る。




「ところでさ?優那?」

私は、もらったコンポタージュを飲みながら答えた。

『なに?』

「追跡やらされるんでしょ?」

『うん』

「ふーん。大変だね」

『うん』

缶の奥にあるコーンを取るのに苦戦する。

「実はさ…」

『うん?』



美奈実は少し黙り込んだ。

『美奈実?』

「ん、あ、ごめん!なんでもない」







私は、今の美奈実の少しの沈黙の意味を理解しなかった。

いや、理解しようとしなかった。









私は、目の前のパソコンの作業に向かった。
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