女神の落としモノ
「確かに、私には分かんないかもしれないよ?でも、その思いを知る事で、私にも分かるようになるかもしれないでしょ!」
私は、平和な時代、世界に生まれた。
だから、シド達のいう底辺という世界は知らない。
それでも、知らないままでいたくないよ。
私を助けてくれたシド達の事なら、なおさら!!
「ハッ、簡単に分かられてたまるか。悪には悪で、罪には罪でこの手を汚す感覚も、俺達の正義の在り方も、温室育ちにはわかんねぇよ」
「っ!!」
それは、完全な拒絶だった。
踏み込まれたくない境界線を見た気がした。
だとしても、あなたを知りたいと思ったらいけないの……?
それすら、私はシド達を傷つけてしまうのかな…
「ちょっとシド?なぁーに熱くなってんの。るな、気にしないで………」
「っ!!」
私はこの場に耐えられず、宿屋を飛び出した。
今は、シドやイオン達の傍にはいたくなかった。
私は、この人達とはわかりあえないの!?
仲間には………なれない?
「あ、るな!!」
「…………………」
呼び止めるイオンの声と、黙ったままのシドの姿が閉まりかかる扉から見えた。
ひき止めてくれればいいのに………
でなきゃ私、ここにいる理由がない………
それでも、逃げ出した足は止まらずに、私は知らない世界にただ一人、飛び出していったのだった。