女神の落としモノ
家族の愛……?
それは、ベルとバルイットさん、そして今はこの世にいないシリーさんの、私が目の前で見た愛の形。
「見返りの無いもの…かな」
そして、それは生まれた時からある、『私』という命を育んでくれた、家族から互いに与え合うもの…
「無条件の愛……だと思う」
それは、与えられるだけではなくて、時には自分からも与える愛なんだ。
『そう……見返りの無い、無条件の愛とあなたは思うのね。その気持ちをどうか忘れないでね……』
この気持ちを………
うん、忘れない。
こんな、温かい気持ち、絶対に忘れない。
ーシュンッ
そして羽は完全に私の中に姿を消した。
「な…んだ、今のは……」
「君は……本当に天使だったんだ……」
驚くシドの横を、ベルが笑みを浮かべながら通りすぎ、私の目の前に立つ。
ベル………
あの、寂しそうに笑う笑顔じゃなくて、本当に晴れやかな笑顔だ。
「るな、君に出会った時から、何か変化を起こしてくれるんじゃないかって、運命を感じていたんだ」
ベルは私の髪を一房掴み、口づける。
「あはは、大袈裟だよ!私はただの女の子だって!」
「そうかな?私にとっては天使だよ」
私達は笑い合う。
もう、寂しくないね……?
これからは、空白を埋めるように、バルイットさんと家族の思い出を作っていってほしい。
「あ、あっちに、海賊がいますわ!」
「あの女性は何やら奇術を使ったぞ!!」
周りがガヤガヤと騒ぎだす。
まずい!!
こんなに目立ってたなんて!!
シドなんか海賊だし、私だって余所者だし、捕まっちゃうかも!!
「おい!!こっちだ!!」
「はわっ!?」
腕を後ろに引かれ、バランスを崩すと、すぐにポスンッと誰かに抱き寄せられる。