女神の落としモノ
「ここに君臨されるは砂漠を支配する暁の王、ファタム・アルハジャール国王であられる。頭を垂れよ」
なんだか目付きの怖い兵士が私達に鋭い視線を向ける。
うわぁ、なんだか嘘ついてるからか、目が合わせられないよ!!
私達は言われるまま頭を垂れ、ドキドキしながら許しを待つ。
「構わない、顔を上げろ」
うわ、低い声………
でも、多分若い人の声なような………
えっと、でも王様なんだよね?
だったらきっとおじさんに違いな………
「アホ、早く頭上げろ…」
「うっ……」
シドに頭をゴツかれてハッとする。
いけない、考え込んでて、王様の言葉無視してた。
恐る恐る顔を上げると、浅黒い肌、紫の髪に金の瞳。まるで、夜空と月を象徴したような男性と目
合った。
見るからに20才くらいの若い男性だ。
こんなに若そうなのに、もう王様なの??
それってなんかすごいなぁ……
「娘、珍しい風貌だな」
王様は私を見て目を見開く。
あれ、前も誰かにそんな事言われたような………
黒髪に黒い瞳って、この世界ではそんなにめずらしいのかな?
東洋人なら誰でもこんな感じなんだけどな。
わりと普通な方だと思ってたのに。
「失礼ながら、彼女は異国の者でして」
咄嗟にイオンが助け船を出してくれる。
「は、はい。私の国では誰でもこのような風貌なのです」
「お前の故郷は何処だ?」
ギックー!!
え、それ今聞く!?聞いちゃいます!?
この世界ではない、別の世界ですよ!
とか、絶対に、言えないし!
というか、信じてもらえないだろうし…………