エターナル・フロンティア~後編~
第四章 呪縛
第一話 語り部
ソラがユアンの義父リダードを殺害したということで、上層部はユアン呼び出し彼を批判した。直接的にリダードを殺害したのはソラになっているが、彼等はユアンが殺害を誘発したと読み、彼を呼び出す。
リダードは肉体を失い直接的に研究や実験に参加できないが、彼等はリダードの豊富な知識を当てにしていた。それがソラに殺害され、知識が永遠に失われてしまった。更にリダードの役割はそれだけではなく、彼は機械と融合して膨大なデータを守る役割も有していた。
だからリダードの死は彼等にとって損失は大きく、その切っ掛けを作ったユアンに対し上層部から辛辣な言葉が次々と発せられる。
しかしユアンは平然とした表情で、彼等の言葉を静かに聞き続ける。そして一通り上層部の面々の話が終わると、今度はユアンが口を開いた。
「それが、どうしたというのですか」
「何?」
「機械に生身を融合するのは確かに利点も存在しますが、寧ろ欠点の方が大きい。感情を有している方が邪魔です。ですので、義父が亡くなったことは残念ですが……良かったのかもしれません」
「貴様、まさか……」
「いえ、そのようなことはありません。皆様方は私が殺害を誘発したと考えているようですが、それは違います」
リダードの殺害の経緯を第三者が聞けば、ユアンが誘発したと思われるだろう。しかしユアンに言わせれば、義父はソラに殺されても仕方がない。〈レーラズ〉と呼ばれているプロジェクト。
その真相を聞けば、殺害に至る理由もわからなくもない。ユアン曰く、自分がソラと同じ立場であったらプロジェクトに関わった人物を殺害している。それも、残酷な方法で――
ユアンは上層部の面々に、殺害の根本的な理由を話すことはしない。リダードがソラの神経を逆撫でしたという理由を付け、事件の顛末を話していく。勿論、彼の説明に無理が存在しているがユアンは弁論に長けているので、相手が上層部だろうが簡単に言い包めてしまう。
「今回の義父の死は残念です。ですが、義父から様々な知識と技術を学んでいますので、それを役立てていきます」
そのように力強く宣言するが、本音で言えば彼等に全ての面で協力するわけではない。自分が持つ技術と知識は、更なる高みを目指す為に欠かせないもの。だから、自分達の保身しか考えていない上昇部の面々の為にそれらを使いたくないというのがユアンの本音だった。
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