エターナル・フロンティア~後編~

 流石、弁論に長けているユアン。上層部の面々はユアンより年上で人生経験が豊富の者達が集まっているのだが、理路整然と語るユアンに弁論で勝つことはできない。だが彼等もプライドを持っているので、自分が属している立場を最大限に利用しユアンを攻めていった。

 彼等が自分の立場を最大限に利用して反論してくることを予期していたユアンは、心の中で彼等のわかり易い行動を馬鹿にする。そして自分が状況的に有利と判断しているので、上層部の面々のように見苦しい態度を取らない。

 それどころか、早く会話が終わって欲しいと思う。正直、彼等が同じ言動を繰り返しているので、飽き飽きとしている。だが、彼等の言葉は続く。

 普通の人間であったら複数の人間に長時間責められたら精神的に参ってしまい、疲労困憊状態になっているが、ユアンは普通の人間と精神構造が異なり、これくらいで参ることはない。逆に好き勝手に発言していいという命令があったら、上層部の全ての人間を精神的に追い詰める自信を持つ。

 ユアンは今、彼等の言動を素直に聞いているフリをしているが、弱い人間ほど発言が多いというのを知っているので、彼等の発言に迫力も何もない存在しない。それどころか発言を繰り返すほどみっともない一面を曝け出し、最終的には高いプライドだけが彼等を支えている。

 そろそろ、限界か――

 そう判断したユアンは、徐に口を開く。

 彼が発した言葉というのは、一方的に話を終了するもの。立場上ユアンがこのようなことを言う権利はないが、言葉を言い尽くしてしまった上層部はユアンの言葉を受け入れるしかない。

 やっと耳障りな声音から解放されたと、ほくそ笑むユアン。一方ユアンに言葉で勝つことができなかったことが相当悔しいのか、上層部の面々の顔は醜いほど歪み顔を引き攣らせている。それが逆に彼等の惨めさを増徴させ、最後の最後まですがり付いていたプライドさえ崩壊させていく。

 勝利を勝ち取ったユアンは彼等の神経を逆撫でするような恭しい態度で一礼すると、踵を返し部屋から退出していく。その途中、ユアンの口許が緩んでいたことを彼等は知らない。


◇◆◇◆◇◆


 人工的に生み出された明かりに照らされ、無機質な光沢を放つ廊下を歩くユアンは、プロジェクトに参加していた面々について考えていた。〈プロジェクト・レーラズ〉と呼ばれたそれに参加していたと判明しているのは、ソラの育ての親とユアンの義父。そして、レナ・コーネリアスだ。
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