エターナル・フロンティア~後編~
ユアンはソラと共に義父の過去の姿を見ていたので性格に判断はできないが「能力研究の第一人者」と呼ばれているのだから、レナがプロジェクトのリーダーというのは間違いない。レナはユアンと出会った時、何も言っていなかった。いや、正しくは言えないという感じか。
人工的に生命を生み出すというのは理論的に現在の科学力では可能だが、人間そのものを生み出すのは難しい。生み出された肉体は何処かに欠損や欠落が存在し、最悪人間の形に形成してくれない。
しかしソラはこの世界に誕生し、あのように問題なく成長しているのだからプロジェクトは成功した。そしてヨシュアという少年を基としたクローンであったとしても、現代の科学を用いれば人間を作り出せるという前例になったのだから、これからの科学の発展に繋がる。
だが、プロジェクトに参加した者達はそれを公にしようとはしない。信実を知っているのはごく一部の者で、義父リダードもユアンにプロジェクトの概要を教えることはなかった。
何か、裏があるのか――
真相を聞き出そうとしても、プロジェクトの参加者の義父はソラによって殺害されてしまった。それならプロジェクトの中心人物――レナのもとへ行き、真相を聞き出すのが一番だ。
しかし、ユアン一人でレナのもとへ行くのではない。彼等が立ち上げたプロジェクトによって生み出されたソラを共に連れて行き、彼の前で全てを語って貰わなければいけない。彼女がどのような反応を見せるかは手に取るようにわかるが、彼女は語る権利を持っている。
すぐに訪れ真相を聞き出すほど、ユアンは非常識の人間ではない。事前に訪れることを連絡し時間を調整するが、彼は「ソラと共に行く」という重要な点をレナに話してはいない。
連絡を終えたユアンはソラが休んでいる部屋へ向かい、彼の様子を確かめる。ソラは今ベッドに横たわり、苦悶した表情で眠っている。これも自身の衝撃的な誕生の秘密にショックを受けた為か、ベッドの上にちょこんっと座っているリオルが心配そうに主人を見ている。
ふと、リオルの耳が動く。主人が休んでいる部屋に誰かが人間が訪れたことを気配で感じ取ったのか、振り返り訪れた人物を確認した瞬間、リオルの態度が一変する。
リオルにとってユアンは邪魔者の何者でもなく、幼いながら主人を不幸にする人間とわかっているので、ユアンの訪れと同時に敵意を剥き出しにする。更にベッドの側へ来たユアンに向かい、引っ掻こうとした。