エターナル・フロンティア~後編~

 ソラはリオルを正しい方法で飼育したいので、飼育方法を理解しているユアンに尋ねるが彼からの言葉は「ネットで調べた方が早い」というもの。プライベートというよりこの場合は自慢話というべきか、それに付いて聞いてくれなかったことを相当根に持っているらしい。

 普段、多くの者の尊敬を集め他者に威圧感を放っているユアンしか知らない者が子供のように臍を曲げている現在の姿を目撃したら、イメージ崩壊は免れず女性の悲鳴が轟くに違いない。

 特にユアンに対していい印象を抱いていないタツキとクリスが現在の信じられない光景を目撃したら、彼等の反応はいかなるものか。阿鼻叫喚というのは大袈裟の言い方だが、それに近い行動を取るに違いない。それだけソラが目撃した光景は、現実としては有り得ないものだった。

 ソラは再度、犬の飼育の仕方を尋ねるがユアンの態度は先程と変わらない。無言を続ける彼に何を言っても無駄と判断したのか、ソラは肩を竦め嘆息するとリオルに向かい「仕方ない」と言い、沈黙を続けた。


◇◆◇◆◇◆


 ソラが暮らすマンションの前で、自動車が停車する。見慣れたマンションの外観にソラは「やはり知っていた」と相手の耳に届かない程度で囁くと、リオルを抱きかかえ下車する。

 同時に感謝の気持ちを言葉として表すと、ユアンは口許を緩め「別にいい」と、含みを持たせた言い方を返す。勿論、彼の言い方は引っ掛かるがソラは深く追求することなく一言二言言葉を交わす。

 その後、別れを告げるとソラはエレベータを使用し目的の階へ向かう。手馴れた手付きでドアロックを解除し入室すると、フローリングの上にリオルを置く。自分がいる場所が大好きな主人の生活場所と理解したのかヒクヒクと鼻を動かした後、短い脚を動かし駆け回る。

「リ、リオル」

 いつもの元気いっぱいの姿に、ソラは怪我してはいけないとリオルを掴まえようとするが、その寸前で事件が発生してしまう。慣れないフローリングの上での歩行、前脚を滑らせ椅子の足に激突する。

「お、おい」

 「キャン」と可愛らしい声音で鳴き、その場で丸くなってしまう。ソラはリオルを抱き上げるとぶつけた箇所を撫で、怪我していないか調べていく。幸い怪我はしていないが、リオルが滑らないようにフローリング全体にカーペットを敷かないといけないとソラは思う。
< 37 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop