エターナル・フロンティア~後編~

 幸い、このような時に簡単に料理できる食材をソラは常備している。彼が棚の中に顔を突っ込み一番置くから取り出したのは、俗に言うインスタント麺。これを多くの野菜と一緒に煮込み付属されている調味料で味付けをすれば、簡単ながら美味しい麺料理が誕生する。

 普段、時間を掛けて料理を作るソラであるが、空腹に耐え切れない今日はインスタント麺を使い料理を行う。流石インスタント麺、短時間で野菜たっぷりの美味しい料理に変化した。

 ふと、いい匂いに誘われてかリオルがヒクヒクと鼻を動かしながらソラの足下にやって来る。そして両方の前足で立ち上がり、美味しい匂いを漂わせている料理を食べたいと訴える。

「これは、駄目だ」

 リオルとインスタント麺を食べたくないというわけではないが、使用している材料の中に犬が食べると中毒を起こしてしまう食材が含まれているので、リオルに与えるわけにはいかない。

 体調を考えているソラの気持ちに気付いていないのか、リオルはなかなか食べ物を与えてくれないことに抗議するかのように鳴き、何を思ったのかその場でグルグルと回転しだす。

 だが、歩き慣れていないフローリングの上。最初は勢いよく回転していたのだが、途中で脚を滑らし腹をフローリングにぶつけて甲高い鳴き声が響く。落ち着きのないリオルにソラは苦笑すると、インスタント麺の代わりに与えても大丈夫な食べ物を冷蔵庫の中から探す。

 見付かったのか、紙パックに入ったミルク。そのまま与えるわけにはいかないので棚から小皿を取り出し、その中にミルクを注ぐ。しかしすぐにミルクを与えるわけではなく、まず躾を行う。ソラはしゃがみ込むと、リオルの腰を押し「お座り」と言い、強制的にその体勢を取らす。

 一方リオルは主人の意図が掴めないので、嫌がる素振りを取る。それでもきちんと躾たいソラは、再度リオルの腰を押しお座りの体勢と取らす。それを何度か繰り返していると「お座り」の言葉の意味を理解したのか、ソラの「お座り」に従い、ちょこんと腰を下ろした。

 頭が良く物覚えのいいリオルの頭を撫でお座りができたことを褒めると、目の前にミルクが注がれた小皿を置く。すると瞬時にリオルが小皿に飛び付き、物凄い勢いでミルクを舐めだす。

 瞬く間のうちに、リオルの胃袋に納まったミルク。まだ飲み足りないのか空になった小皿を舐め続け、ミルクが湧いて出てこないかと期待しているのか鼻先で小皿を突っ突きだす。もっと与えてもいいがリオルは子犬なので、大量に与えては腹を下してしまうのでこれで終わり。
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