エターナル・フロンティア~後編~
第二話 真意
今回の出来事は、偶然か必然か――そのように尋ねた場合、大半の者が「偶然」と回答する。しかし、ユアンの本質に気付いている者は「必然」と力強く言い放ち、これも計画のひとつだと見抜く。しかし、見抜いたところで、その人物がどうにかできる問題ではない。
現にソラはユアンの誘いの裏側に隠されている真実に気付いていたが、幼馴染のイリアの名前を出されたことにより陥落してしまう。これも彼が得意としている話術と事前の根回しによって彼の都合がいい方向に誘導されてしまったのだろうと、ソラは自分に言い聞かす。
ユアンは自分が欲しているモノに対し、あらゆる手段を用いてくる。また、複数存在する逃げ道のひとつひとつを潰し、そのモノが逃げられないようにする。懸命に足掻いたところでそれさえも計画のひとつと捉え、長けている話術を使い相手の深層を揺す振っていく。
結果、欲しているモノの大部分を手に入れ、自分にとって障害となりうる人物を排除し続ける。表面ではいい人物を演じ多くの部下達を統率していくが、裏では大量の血を浴び血に酔い痴れる。時に非情な振る舞いを行ない、義父さえも物のように扱い死に至らしめた。
彼は、普通と違う。
幼少の頃、感情を失った。
まるで、機械のよう。
だから、他の者と違う。
ソラは遠くで中年の男性と話している人物を一瞥した後、彼を表現する数々の言葉が脳裏に過ぎる。彼が一瞥した人物こそ話術で簡単に落としたユアンであり、今回の出来事を仕組んだ人物。今、彼が見せているのは対外的なものであるが、隙が一切ない姿は侮れない。
ユアンが何を話しているのかは、この位置からでは聞き取ることはできない。だからといって彼の話に興味があるわけでもないし、興味を持ちたいとも思っていない。ソラは再度一瞥した後、深い溜息を何度も付き、改めで自分がどうしてこの場所に来たのか思い出す。
「大丈夫?」
「うん? ああ、別に――」
「それならいいけど」
そう、ソラに声を掛けてきたのは同じ長椅子に腰掛けている幼馴染のイリア。先程から顔色が悪い幼馴染を心配しているのだろう、不安に彩られた表情を浮かべながらソラに視線を合わす。心配してくるイリアにソラは微笑を浮かべると、自分を心配しなくていいと話す。