エターナル・フロンティア~後編~
「でも……」
「多分、寝不足」
「寝不足って、どれくらい寝ているの?」
そう尋ねられたところで、正確な睡眠時間を話せるわけではない。毎日決まった時刻に就寝し、起床しているわけではない。それに寝不足のもうひとつ原因は共に暮らすようになった相棒のリオルも関係しており、熟睡している頃を狙ってベッドに潜り込んでくるのだ。
まだ一匹で寝るのが怖いのだろう、ソラが熟睡した時刻を狙ってリオルがやって来る。リオルは主人の寝室に到着すると同時にベッドに攀じ登り、掛け布団の中に潜り込んでくる。
本人は大好きな主人と寝られることに満足しているが、潜り込まれたことによりソラは強制的に起こされてしまう。現在リオルは子犬なので身体は小さいが、これが成長し身体が大きくなったら迷惑この上ない。それにベッドが狭くなってしまい、ソラが休養できない。
しかしリオルは普通の犬以上に物分りが良く頭がいいので、一緒に寝てはいけないと躾ければきちんと理解してくれるだろう。ソラは自分の足元でちょこんっと座り尻尾を振り見上げているリオルの姿を思い出しつつ、そのような犬を飼いはじめたことをイリアに話す。
「可愛い?」
「可愛いよ」
「会いたい」
「今は、タツキに任せている」
「今じゃないわ。ソラが都合のいい日。どんな犬を飼ったのか知りたいし、可愛い動物は好きなの」
ソラが可愛い子犬と一緒に暮らしだしたことを知ったイリアは、リオルの性格に付いて質問しだす。確かにリオルは物分りが良く頭のいい犬だが、いかんせん特定の人物――特にソラ以外に尻尾を振ろうとしない。また、気に入らない相手は噛み付き鋭い爪で引っ掻く。
その被害者はユアンの部下にまで至り、彼等にトラウマを植え付けさせる。現在、リオルを預けているタツキも苦労しているだろう。いくらリオルに危害を加えない人物とはいえ、タツキの性格はわかっていない。だから今、彼女の悲鳴が何度も轟いているかもしれない。
だが、そうなってしまった原因が以前の飼い主が関係していることをソラは聞いているので、その部分を改善するように躾するのは、リオルの精神面を考えればソラは行なえない。やはり特定の人物以外懐かないのは今後影響が出てくるだろうし、リオル自身の為にもならない。