エターナル・フロンティア~後編~
「ソラは、どうするの?」
「何が?」
「ラドック博士と私が発表している時」
「外で待っている」
「いいの?」
「オレは部外者だから、一緒にいるわけにはいかないよ。邪魔になってしまうし、それに専門外だ」
知識が多く頭がいいソラだが、イリアが専門としている分野まで熟知しているわけではない。もし共にいることが可能であったとしても、理解できない分野の話を聞いていても面白くない。だから発表が終了するまで、隣の部屋にいるのでイリアは心配しなくていいと伝える。
「大丈夫?」
「護衛のこと?」
「うん。ソラの能力が、駄目と言っているわけじゃないの。ただ、心配で……ソラは一人でしょ。もし何かがあったら、私は……本当に、無理をしないで。怪我を負ったら、悲しくて……」
「ああ、そういうことか。それだったら、心配しなくていい。こういうことには、慣れている」
慣れているという言葉の裏側に隠されているのは、半分が本当で半分が嘘。身体を弄くられ度重なる実験の結果、ある程度身体を傷付けられても何とも思わなくなってきた。それは痛覚が麻痺しているわけではなく、そのようにならなければ彼は生きてはいけないのだ。
ソラの身体に残る夥しい傷痕は、彼がどのような生活を送ってきたのか証明するもの。それらの傷は現在治癒しているが、イリアと話していると傷痕が疼き身体の奥底を刺激する。それでもイリアに気付かれ心配を掛けてはいけないと、ぎこちないながらも笑顔を作る。
「無理はしないでね」
「無理はしないよ」
「そうやって言うけど、無理をしていると思うわ。ソラって、何でも一人で行なってしまうもの。それは凄いというのはわかるけど、私だって頼られたいわ。一応、ソラと幼馴染よ」
「……有難う」
彼の爽やかな笑顔にイリアは頬を微かに赤らめると、視線を合わすのが恥ずかしいのか横を向いてしまう。そのようなやり取りを目撃したのは、会話を終え戻って来たユアン。彼等が喧嘩していると勘違いしたのだろう、幼馴染同士仲良くやらないといけないと注意する。