エターナル・フロンティア~後編~
「いえ、違います」
「違う?」
「喧嘩していたわけではありません。イリアとは、普通に話していました。博士の勘違いです」
「そうか」
「そ、そうです。ラドック博士の勘違いです」
イリアも同じように取り繕うとするが、ソラのように上手く取り繕うことができない。結果、勘のいいユアンに心の中を読まれてしまうが、ユアンは笑っているだけで何も言わない。その不気味とも取れる態度にソラは、何か言いたげな視線をユアンに送り反応を見る。
ソラが送る視線にユアンは意味を理解したのか、やれやれという雰囲気で肩を竦め笑いを止め、麗しく素晴らしい関係だと彼等を評する。勿論、面と向かって彼等に言ったわけではない。
「さて、行こうか」
「このようなことを言うのはなんですが、イリアを頼みます。何かがあった場合は、オレが……」
「心配か?」
「いけませんか?」
「いや、幼馴染を心配するのはおかしなことではない。だが、もしもの時は君の力に期待している」
「わかっています」
ユアンにイリアを頼むと言うが、これで不安感が拭えたわけではない。ソラがイリアを心配しているのは、ユアンに向けられた攻撃を誤って彼女が受けてしまわないかというもの。
イリアは普通の女の子なので、武芸に長けているわけではない。また、ユアンのアシスタントをしているので彼女は狙われやすい。流石にアシスタントをしているだけで命を奪われる心配はないだろうが、ユアンと敵対している人物の感情は推し量れないので油断できない。
通常、対立している同士で戦うものだが、軟弱の者は自分と同等かそれ以下の人物を狙う。この場合、相手はイリアを集中的に狙ってくるかもしれない。ユアンは曲者で下手に攻撃を仕掛けると、倍以上の威力を持って反撃してくる。また、命を落す時もあるので厄介だ。
ソラは必要以上にイリアを気に掛け、その身を心配する。それは幼馴染だからではなく別の感情が関わっていることに、ソラは気付いているが流石に気恥ずかしいので面と向かっては言えない。だから今彼女を任せることができるユアンに、身の安全を図って欲しいと頼んだ。